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2021-05-22 22:14

(連載1)アメリカとは ―各種指標につき日本とも対照しながら―

中港 拓 北米欧州豪NZ情報分析者/海外事業経営者

 「アメリカは」と語られることが多く、昨今ますます増えているのではないでしょうか。で、実際どんな国かと言うと、領土(面積は日本の約25倍)のうち北米部分の形、50州と首都ワシントンDCと準州等、日米関係、共和国、そして、軍事でも経済でも世界一の超大国というイメージは多くの方の頭の中ですぐに出て来ると思います。他方、具体的に多くの個別部分を訊かれると案外少々詰まってしまうのではないでしょうか。何より、情報が多過ぎて、逆によく分からないという面もありそうです。数字を常に覚えておく必要は大多数の日本人にとって無いはずですが、ざくっとした数字のイメージが頭の中にあると、アメリカの色々なことのイメージが湧き易いというのが長年の個人的実感でもあります。検索すると割とすぐに出て来るいくつかの指標について2019年近辺のデータを基に、あくまで2020年あるいは少し前の概ねこんな感じというアメリカと日本の状態を取り急ぎ挙げてみます。(「ドル」は全て「米ドル」です。)

1.(総合的な)国際的影響力
 超大国と言うと、まずはこの種の指標でしょうか。これは、国家首脳のリーダーシップ、文化的影響力、国際的な同盟関係などにつき1万人以上の有識者が付けたスコアによりランキング化したものだそうです。本稿で以下に挙げている各論的指標も大いに参考になります。アメリカが世界一とされており、順当でしょう。日本も世界7位に一応入っており、色々考えるとこんな感じかなというところでしょうか。

2.言語
 何をするにしても人間のすることの多くには言語を伴うので、他国より優位な言語を母国語とすること自体が国や国民にとっての武器になります。有り得ない仮定ですが仮に完全に同じ能力なら、優位な言語を使えるほうが勝ちと言えるのではないでしょうか。アメリカ国民の母国語である英語はダントツの世界一。現実感覚的には当然の結果です。日本語も、国際的な印象もあるポルトガル語を一応抑えて世界8位とされており、個人的にはこの結果自体には悪い気はしません。

3.研究
 一筋縄では実りませんが、いざ実ると、研究全般のみならず企業活動そして現実生活の様々な事柄にも長きにわたってプラスの作用をもたらしますので、国や企業そして国民にとって非常に重要です。
(1)大学
研究や研究者についてのものも含む、評判についてのこのランキングでは、世界101位までの大学のうち、アメリカは42校とダントツ1位。日本は5校となっており、両国とも聞き慣れた結果となっています。学力だけを見るならば、日本の大学生は同等とされるアメリカの大学の学生に負けていることはない、というのが個人的印象です。他方、アメリカを筆頭とする英語圏の大学院には世界各国から多くが来て、少なからぬ人材が自らの希望で卒業後その滞在英語圏国の研究を支える、という形が定着しています。
(2)ノーベル賞受賞者数
 この栄誉ある賞の対象になっていない研究分野も少なくなく、この賞を受賞していないが非常に優れた研究をされた或いはされている研究者も星の数ほど居られます。生きていないと受賞できないこと、時のトレンド等も含めて、運の要素も小さくないようにも思います。その前提で、あくまで分かり易い指標として挙げます。累計で約1000名のうち、アメリカは383名でこれもダントツ世界一。日本は28名で、これも世界10位以内に一応入っています。受賞された日本人の研究者はほぼ例外無く、英語論文が評価されて受賞に至っている、というのがよく見る光景です。正直、日本人が受賞すると、他人事ではありますが毎回嬉しいです。
(3)シンクタンク
 政府の人材の出入りが珍しくないアメリカでは、政策立案や提言などにおいて一定の影響力を持っていると言えます。政治・経済から人工知能にまでわたる、大学付属のものも含めた世界合計8200強のうち、アメリカだけで合計1900弱、しかも上位175のうち25を占めています。日本は合計128、上位175のうち4となっています。日本の場合、これまで言われてきたとおり「中央省庁が日本最大のシンクタンク」であり、その働きを今後どのようにしていくかとも絡めて、シンクタンク機能を考えていく必要があります。

4.経済
 アメリカの名目GDPは世界一で、21兆4000億ドル強。人口は3億3000万人弱(世界3位)、一人当たりGDPは6万5000ドル強(世界7位)、一人当たり可処分所得は5万3000ドル強。日本は、名目GDP 5兆ドル強(世界3位)、人口1億3000万人弱(世界11位)、一人当たりGDP 4万ドル強(世界25位)、一人当たり可処分所得は4万ドル弱。名目GDPが世界2位だったのは、1968年から2009年までの42年間でした。 GDPの比較でアメリカは日本の4倍強であること、国内で格差が一段と大きい印象はありますが国民平均の可処分所得でアメリカは日本を2割以上上回っていること等、率直に言って、外国から色々と集まるアメリカ経済の規模は日本経済の規模よりも随分大きいと言えます。(つづく)

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