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2020-07-20 12:23

(連載1)「敵基地攻撃能力」に慎重な船田元氏の見解に思う

加藤 成一 元弁護士
 元国務大臣・衆議院議員の船田元氏は、7月14・15日付「百花斉放」掲載の論稿「敵基地攻撃能力の可否と課題」(連載1・連載2)において、1956年(昭和31年)2月29日鳩山一郎内閣の「わが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つのは憲法の趣旨ではない」との政府答弁を引用され、その場合における「敵基地攻撃」の合憲性を肯定される。しかし、船田氏は、他方で、敵基地攻撃については、(1)我が国に対する急迫不正の侵害の発生、(2)武器使用以外に適当な手段がない、(3)必要最小限度の武器使用、との厳格な武力行使の「3要件」が必要であるとされる。
 
 そして、船田氏は、上記(1)の要件について、我が国に向けたミサイルに燃料を補填するなど、相手国による攻撃以前に先制攻撃しなければ敵基地攻撃の意味はないと言われる。しかし、実際に先制攻撃をしなくても、日本に十分な先制攻撃能力があれば、相手国による攻撃を事前に抑止することが可能となるのが「抑止力理論」であり、世界の安全保障の常識と言えよう。これこそあるべき「専守防衛」ではないだろうか。
 
 また、船田氏は、上記(2)の要件について、日本ではなく、米軍による敵基地攻撃が日米間の役割分担であると言われる。しかし、米国が条約に従い参戦するにしても日本の期待に応じて米軍が敵基地の攻撃をするかは確実ではない。米国自身が自国の国益と世論を無視できないからである。したがって、日本が「自衛」のために、超高性能偵察衛星や超高性能レーダー、F-15 戦闘機、対艦・対地超音速ミサイル・中長距離巡航ミサイルなど、一定の敵基地攻撃能力を保有し米軍の役割をも負担する能力を取得することは、米軍の負担を軽減し、むしろ米国から歓迎されよう。
 
 さらに、船田氏は、上記(3)の要件について、日本が敵基地攻撃能力のために対艦・対地用ミサイルや、巡航ミサイルなどの攻撃的兵器を保有することは、自衛のための「必要最小限度」を超えると言われる。しかし、政府見解における「必要最小限度」とは、あくまでも相対的な概念であり、相手国の武器水準が高度化すれば、自衛のために我が国の武器水準も一定程度高度化せざるを得ない。そうでなければ到底抑止力を維持できず、専守防衛自体が不可能となるからである。したがって、これまでの一貫した政府見解によれば、自衛のための核兵器も「必要最小限度」に反せず合憲であり、攻撃的兵器のすべてが「必要最小限度」に反するとは言えないのである。(つづく)
 
 
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