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2020-05-19 23:28

虚ろになった日本の民主主義

荒木 和博 特定失踪者問題調査会代表
 この週末5月15日、16日という日に色々と考えることがありました。「5・15」はお分かりだと思いますが昭和7年(1932)の海軍を中心としたクーデター未遂、すなわち「五・一五事件」です。では「5・16」は何でしょう。答えは昭和36年(1961)に韓国で朴正煕ら青年将校が起こして成功したクーデター、いわゆる「5・16軍事クーデター」です。朴正煕は現在獄中にある朴槿恵前大統領の父です。朴正煕は戦前満州国の軍官学校予科から成績優秀で日本の陸軍士官学校本科に留学しました。陸士の生徒で言えば57期相当になります。ちなみに陸士の1期上が韓国陸軍の軍籍番号1番、映画「日本の一番長い日」で阿南陸将夫人に子息の戦死を伝えに来た同期生、李亨根大尉でした。
 
 朴正煕がこの「5・16」のとき一番のモデルにしたのは「五・一五事件」の4年後に起きた「二・二六事件」でした。昭和47年(1972)、体制の引き締めのために憲法を改正し、大統領に権限を集中した体制を「維新体制」と名付けたのは「二・二六事件」の思想的基盤になった「昭和維新」という考えだったと思います。朴正煕は権力掌握後経済の立て直しを図りますが、その青写真は前政権時代に既にできていたものだったと言われています。しかし前政権は内部対立が激しく実行できませんでした。どの本だったか忘れましたが、当時官僚だった人が、「何年かかっても決断できなかったことをあっという間に決めてしまったのを見てこれが革命かと思った」と書いていました。この事件を引き合いに出した趣旨は、とてもできるようなものではないと思っていたことでも、その土台となる固定観念を超越すればそれ以前にはとても解決できないとも思えたことに現実的な筋道が見えてくるということにあります。
 
 朴正煕の時代、韓国は猛烈な速度で経済発展をしました。もちろんそこには日本との国交正常化が大きな役割を果たしていますし、その発展の歪みも随所に生まれましたが、大反対の中でこれを進めた朴正煕のリーダーシップがあったからこそ今日の韓国があることは間違いありません。ただし、残念ながら今の韓国人の中でそれを理解している人はすでに少数派になっており、文在寅政権は朴正煕の時代を目の敵にしています。
 
 なぜこのようなことに思いを致したのかというと、国民が選挙で選んだ議員が与野党で政策を闘わせ、それによってベストではなくてもベターな政治が行われるという我が国の議会制民主主義の信頼が崩れかかっていることを改めて認識したからです。特に北朝鮮によって深刻な人権侵害を受けている拉致被害者を助けようにも、どう考えても今の法体系で取り返せないですし、今国会はコロナ対策とポスト安倍が誰かで皆さん頭が一杯で、与野党ともに「拉致どころではない」という感じです。この虚構のような国政を見るにつけ、固定観念を超越したアプローチがあっても全く不思議ではないと感じます。今、一度ゼロベースで日本の民主主義のあり方をどうしたらいいのか、考えてみても良いのではないでしょうか。
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