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2020-03-19 18:37

東京五輪開催は断念せざるを得ない

松井 啓 初代駐カザフスタン大使
 3月9日付の本論壇への投稿で、私は東京五輪を開催すべしと主張したが、その後の事態の急変に鑑み、以下の通り開催は断念せざるを得ないとの結論に至った。中国の武漢で昨年末に発生した新型コロナウィルスは、WHO(世界保健機構)がパンデミック(世界的流行病)宣言を躊躇したこともあり、当初の予想をはるかに上回る規模と速度で津波のように世界中に広まり、イタリアをはじめとするヨーロッパ各国、アメリカ、南米にも波及している。感染者数は中国本土では8万人でピークアウトの兆しを見せているが、世界全体では18万人を超えており(3月17日ジョンホプキンズ大学HP)、欧米における早期終息の見通しはない。

 IOC(国際オリンピック委員会)は17日の電話理事会後、東京五輪の予定通り実施を目指す方針を発表し、安倍首相も「人類が新型コロナウィルスに打ち勝つ証として、完全な形で実施することで一致した」と述べた。しかしながらコロナウィルスの影響により、各国で学校閉鎖、外出制限、飲食店の営業停止、大規模集会の禁止、各種スポーツイベントの中止や延期、感染拡大防止のための国家非常事態宣言、更には各国間の旅行・往来制限(入国禁止、ビザ停止)などに発展し、世界経済へ暗い影を投げかけ、原油価格の急落、資本市場の混乱を招いている。

 東京五輪に向けて練習に励んできた選手には誠につらい仕打ちと映ろうが、著名選手の中からは健康が保証されない状況では参加しないとの声も出ており、既にスペイン五輪委員会は開催延期を求めているとの報道もある。国際社会でコロナ感染不安が早急に消える見込みのない中での五輪開催強行は、「誰のためか、何のためか」との基本的な問題に直面する。国際的スポーツ競技会は、諸外国からの参加選手、観客があってこそ意義のあるものであるから、政治的ボイコットではないにしろ、コロナ感染を理由に不参加国や不参加選手が出ることとなれば「民族の祭典」「平和の祭典」としてのオリンピックに傷がつくこととなる。

 このような現況を見れば東京五輪を予定通り7月24日に開催すべしと主張する国はないであろう。選手のためを思えば最終決断は早ければ早いほど良い。中止の原因はパンデミックとなったコロナウィルスであり、開催国日本の責務ではないから、国際的違約金や解約金等を最小限に止めるよう理解を求めるべきである。他方、WHO、IOC、IF(各国際競技連盟)や関係スポーツ機関に呼びかけ、新型ウィルス関連情報の共有、調和のとれた感染防止策をとるようイニシアチブをとってはどうか。安倍政権は新型ウィルスにより更に減速した日本経済の建て直し、日常生活の正常化に果敢に取り組むと同時に、各国が国際的に調和の取れた景気刺激策をとるよう呼びかけるべきであろう。
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