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2007-08-14 10:02

三度、中国海軍が空母を保有する日を考える

秋元一峰  海洋問題研究者、元海将補
 私は、4月24日に「中国海軍が空母を保有する日を考えよう」、また6月19日に「再び、中国海軍が空母を保有する日を考えよう」と題して、着々と中国が空母保有の準備を進めている状況について警告を発した。日本人はこの問題についてほとんど能天気の状態だが、様々な情報から見ると、中国海軍が空母を保有する日は、いよいよ現実味を帯びてきているように思える。本投稿は、「三度、中国海軍が空母を保有する日を考える」である。

 7月28日付の産経新聞は、漢和情報センター(カナダ)の情報として中国軍が艦載機の着艦装備4点をロシアから購入したとの記事を掲載した。漢和情報センターの掲示の詳細を調べてみると、購入した装備は艦載機が着艦時にテールからフックを出し甲板に張られたワイヤーに引っ掛けるアレスティングワイヤーで、1点は研究・コピー用、1点はロシアから購入した空母「ワリヤーグ」の試験装備用、残りの2点は建造計画中の2隻の空母用であると分析される由である。

 4月の拙文で紹介したように、ロシアから購入した旧ソ連海軍の空母「ワリヤーグ」は現在大連港に係留されており、中国海軍艦艇の塗色がなされている。この「ワリヤーグ」の甲板上で何らかの作業が行われているとの情報が、7月10日に、デンマークの海洋安全保障研究所から流された。飛行甲板上で多くの作業員が新たな装備を取り付けていたとされる。この情報が確かなものであるとすると、漢和情報センターが分析したアレスティングワイヤーの「ワリヤーグ」への試験装備であった可能性が高い。3月、韓国紙が「中国は2010年に48,000トンの在来型空母を、また2020年に93,000トンの原子力空母を建造する、と記した中国共産党の内部文書を入手したと」と報道したことがある。漢和情報センターによる2点は建造計画中の2隻の空母用とする分析と符合する。

 空母について言えば、建造よりも運用の方が遥かに厄介であることはよく知られている。艦載機の安全迅速な離発着、制海とパワープロジェクションに必要な様々な兵種の適時適切な使用等々に加えて、莫大な維持費が掛かる。海外では「中国の空母」は中国にとって“Money-draining hole on the water”となると揶揄する論調もある。しかし、それでも保有すれば、歴史上初めて日本の周辺海域に同盟国以外の国の空母が存在することになる。そのことについて、日本はもっと真剣に考え対処すべきではないか。

 何度も繰り返すが、核保有、先富による経済発展、人工衛星等々の目標を確実に達成してきた中国の底力を過小評価してはならない。悲観的に備える、それが安全保障の基本だ。年金記録や事務所経費が選挙戦最大の争点となり、政治家の顔の絆創膏が面白おかしく取り上げられる、そんな平和な国も、隣国の空母一隻で目が覚めるときが来るかも知れない。しかし、その時ではもう遅いのではないか。
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