国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-02-21 19:16

宇宙における科学研究と安全保障の密接な関係

船田 元 衆議院議員
 平成20年に我が国の宇宙基本法が成立し、それまで宇宙利用を平和目的のみに限定した姿勢を変更し、安全保障分野に拡大した。またこれをもとにした宇宙基本計画が策定され、まもなく10年が経過しようとしている。現在、次期宇宙基本計画を策定するための議論が、政府において活発に行われている。この10年間アメリカをはじめ、各国の宇宙における活動が、一層活発になっている。月を周回する宇宙ステーションをつくる「ゲートウェイ構想」や、かつてのアポロ計画に続く有人月探査である「アルテミス計画」がNASAにおいて具体化しつつある。民間企業が宇宙旅行に進出する時代となり、宇宙における安全保障への取り組みも活発になっている。宇宙開発の主体が多様化しており、中進国や途上国も取り組み出している。
 
 現在の宇宙基本計画では、これらの動きを取り入れておらず、対応が遅れる懸念がある。これらの動きをしっかり取り込んだ新しい計画が望まれる。私はその際に踏まえるべき原則として、科学技術や純粋な学術研究という分野、宇宙ビジネスの振興という分野、安全保障の分野をバランスよく発展させるべきと考える。3分野それぞれが密接に関連しており、どれか一つの分野が弱いと、他の分野の発展の足を引っ張りかねないからである。
 
 ところで最近の我が国の宇宙開発では、安全保障分野に勢いがある。その中心は「宇宙状況監視(SSA)」と呼ばれるもので、用済みの衛星やロケットの残骸など、スペースデブリ(宇宙のゴミ)の状況を把握して、衛星との衝突を回避すること。さらにはデブリの捕獲や除去の方法についても検討することである。スパイ衛星を監視し、活動を抑止することも含まれる。政府としては航空自衛隊の中に「宇宙作戦隊」を組織すべく、防衛省設置法を改正する準備をしている。日米安保体制をさらに強化することにもなるが、実はヨーロッパ、アメリカ、日本の3地域が連携してこの活動を行うことによって、デブリを24時間監視するメリットもある。
 
 しかしこのスペースデブリの観測は、実は以前より科学者の手に委ねられて来た。観測のノウハウは彼らが開発し実用化してきたものだ。その協力なくして自衛隊が行うことは不可能である。彼らはさらに地球近傍天体(小惑星)観測も同時に行なっており、これらの地球衝突の可能性も探っている。これも重要な宇宙状況監視には違いがない。このように科学的研究と安全保障は密接に関わっており、これを切り離したり、どちらかを弱めたりすることはあってはならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム