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2007-08-03 11:30

連載投稿(2)安倍政権と今後の日本外交

太田正利  元駐南アフリカ大使
 今回の参議院選挙では、連載投稿(1)で論じた「年金」問題のほか、閣僚の不始末・不手際が目立った。この点については安倍総理の任命責任があるかも知れぬが、むしろ適切なアドバイザーの不在が指摘される。また、問題発覚の際、下のものを庇うという人間的な「暖かさ」が裏目に出たのではないか。かかる周辺的な事実だけを取り上げて、政治家としての「資質に欠ける」とは言い過ぎではないか。

 今後の政治上の課題は、先ずこれからの日本を如何に導くかであるが、憲法、教育、外交のありかたをめぐる戦後レジームの見直しがそこにあるべきだ。これに対し、反自民・反安倍勢力からは「反動的」乃至「軍国主義復活の象徴」なる暴論が浴びせられる。これが中・朝など外国発(これは当たり前)ではなく、「国内」から出ていることこそ問題である。このような暴論で語られるのは「集団的自衛権の容認→憲法改正→軍国主義復活(あなたの子供を戦場に送ることである!)」などという空想物語だが、一部の言論ではこれが流布されている。簡単にかかる論理を受け入れる層も少ないとは思うが、かかる言論に挑んで徹底的に論破するには幅広い知識ないし教養が要求される。また、壊れかけた自民党を如何に建てなおすか。また、安保・軍事問題に関する民主党内の意志統一を如何に確保するか。両党とも大きな問題を抱えている。

 時期悪く、アメリカ下院本会議では例の「従軍慰安婦」決議が採択された。今日まで、この問題に限らず、誤解・曲解に基づく日本批判に対し、英語で適切な反論を行ってこなかったことの報いである。国際社会では沈黙は同意と見做されるのが常識で、今こそ日本側からの総反攻の秋である。

 今や日本はその存亡に係る重大時期に直面している、と筆者は考える。その際、国内問題であろうが国際問題であろうが、「日本は日本」である。国内問題の取り扱いが思わぬ国際問題に発展する場合も想定される。例えば「テロ特措法」延長の取扱いなど、一歩間違えば、日米関係のみならず、米以外の多くの関係国との信頼関係を損ね、日本の国際的な地位に悪影響を及ぼすことになろう。まさに暗澹たる思いに駆られる。民主党は、参議院において「テロ特措法」延長に反対すると言っている。しかし、国内目的のために対外関係を利用するなどは、成熟した政治家が決してしてはならぬタブーである。このことは国内メディアにも言い得ることである。今回は詳細は避けるが、今迄にこのような事例が数多く見られ、知らず知らずに国益を害していたのだ。我々も日本国民としての誇りを持って、物事に対処していく必要がある。(おわり)
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