国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-08-01 11:20

連載投稿(1)参議院選挙と年金問題

太田正利  元駐南アフリカ大使
 今回の参議院選挙の結果は政権与党の惨敗だった。ある程度予想されてはいたが、正直これ程とは思わなかった。最大の問題は、争点が安倍内閣が標榜する「戦後レジームの見直し」という根本的な問題ではなく、周辺的な諸問題に集中したことであった。そもそも情報は、その発信者――例えば共産党、民主党、自民党等――により各種のものが出てくるが、これを受け取る側もその心得でいる筈で、そこにPR戦術の巧拙が表面化する。

 「言論の自由」を享受しているマスコミの場合、意識的に又は無意識的に事態をセンセーショナルに報道する(そのほうが格好はいい)ことにより、結果として実情を歪める恐れがある。かくして、マスコミは本質的な争点ではなく、周辺的な争点において、選挙民の行動を容易に左右し得ることになる。今回の選挙では、あたかも5千万件+アルファの年金が消えた――つまり「年金がもらえない」かもしれぬ――という恐怖感を国民に植え付けた点もあろう。
 
 争点の一つとされる年金問題について、自民党内閣=安倍内閣の責任とするメディアが多かった。確かに社会保険庁は政府の一部門であり、一義的には社会保険庁長官の責任ではある。しかし、年金記録消失という事態が生じたのは何故か。月刊誌『WiLL』8月号の2つの記事―― 屋山太郎「社保庁労使・・」と提尭・久保紘之対談「『年金記録消失』 は『社保庁解体』潰しだ!」――に注目したい。

 年金情報のPCによる管理は大幅に遅れていた。自治労は「全国オンライン化反対」の闘争を進め、総評も反合理化闘争を展開した。その結果、社保庁当局も妥協し、21項目の「覚書」を策定し、労働時間のみならず、端末機の操作についてキータッチ数をも含む細目も定めた。屋山論文によれば、社保庁の組合運動はかつての国労・動労そっくりだという。これら組織を支えたのはどの政党だったのか!民主党は元来社保庁解体を主張していた筈だが、社保庁を解体すれば労組の解体も不可避となることに気づき、年金記録「消失」に問題をすりかえ、その実態をマスコミに流して、組織解体問題をうやむやにしたというのが、堤・久保両氏の論旨である。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム