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2019-07-25 14:26

(連載1)日本の政策形成過程のさらなる民主化に向けて

小野寺 栄 松下政経塾第37期生
 さる7月21日、令和初となる参議院議員選挙が行われた。年金、消費増税、憲法改正などが注目されつつも、有権者にとっての明確な争点とはならず、与野党ともに大きなうねりを生み出すことは出来なかった。低調な論戦に引きずられるように、投票率は50%を割り、国政選挙としては戦後二番目に低い数字となった。実に半数以上の国民が政治に背を向けたという事実を民主主義の危機と捉え、政治に民意が反映される仕組みづくりに真摯に向き合うべきだ。具体的には、投票率を上げることはもちろん、選挙以外にも政治の場に国民の声が届くようなチャネルを増やすことが大切だ。

 議員内閣制に基づく日本の国会では、内閣提出法案(閣法)と国会議員による議員立法の二通りが審議される。しかし、両法案を比較すると閣法の成立率が約9割であるのに対して、議員立法のそれは2割に留まる。限られた会期においてアジェンダを設定する権限を持つ与党は閣法を優先して審議するため、野党独自の議員立法は委員会の議論の日程にすらのらないケースが多い。閣法は役人や業界団体が中心となって作成され、その後与党による事前審査が行われる。つまり、法案として国民の目に触れる段階には既に大部分が決定しているのだ。

 したがって、「選挙で選ばれた国民の代表者である各国会議員が、法案を審議する場」としての国会は形骸化しているといえる。このように、現状では、政策立案過程に一国民が関わることは難しく、日々の生活に根差す問題意識や政策的ニーズを的確に政策や法案に反映できているとは言い難い。これらを踏まえ、民主主義に基づく政治を強化するため、以下の提案をしたい。まずは、議員立法を強化することである。多重化した意思決定過程を踏む閣法に比べて直接選挙によって国民から選ばれた国会議員自身による議員立法は、民意をよりダイレクトに法案に取り入れやすい(むろん、露骨に一部の支援者や利益団体のみに有利に働く法案には目を光らせなければいけない)。

 ただし、日本で議員立法を強化するためにはいくつか問題点がある。一つ目は、特に野党において議員の立法を補佐するスタッフが少ないことである。各国会議員は主として議員の政策立案、立法活動を補佐する政策担当秘書を雇うことができるが、一人で広い政策分野をカバーすることは困難である。その他、議員の主なサポート機関とって両院に議員法制局も存在しているがこちらも圧倒的に人数が不足している。そこで、議員事務所に民間から専門家を受け入れ、政策スタッフとして政策形成をサポートする仕組みを構築してはどうか。(つづく)
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