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2019-06-05 13:06

(連載1)トランプ大統領のロシア疑惑ー米中ロの三国関係

倉西 雅子 政治学者
 通商面における米中関係の悪化は、安全保障分野における両国の対立と背中合わせでもあります。将来的な米中の軍事衝突も予測の範囲に入り、アメリカと同盟関係にある日本国もまた、中国の軍事大国化と激化する米中対立は国家の存亡にかかわる大問題です。緊迫化する国際情勢にあって、日本国政府は周辺諸国との関係をめぐり正念場に差し掛かっておりますが、特に鍵となるのはロシアとの関係です。
 
 同盟国であるアメリカでは、捜査報告書が公表されたとはいえ、事あるごとにトランプ大統領のロシア疑惑が持ち上ってきましたが、この現象も、背後に米中対立を想定しますと理解に難くはありません。ヘンリー・キッシンジャー元国務長官に代表されるように、筋金入りの親中派は共和党にも少なくないものの、クリントン政権やオバマ政権等、歴代の民主党政権は、基本的には親中路線を継承してきたからです。中国がアメリカの敵国として国民に意識されるに至った今日、米民主党には、自らの中国との近い関係に対する批判を避けるためにも、かつては主要敵国であったロシアを前面に押し出すことで、トランプ大統領をロシアに国を売る‘裏切り者’のイメージを植え付けたいのでしょう。
 
 トランプ大統領の無実の主張を信じるならば、ロシア疑惑は、まことに厄介な言いがかりとなります。何故ならば、中国との対立を睨んだ上での対ロ融和策、あるいは、ロシア懐柔策が採り難くなるからです。僅かであれロシアに対する妥協を示せば、疑惑の証拠と見なされかねないのです。米民主党、あるいは、その背後に控えている中国にとりましては、ロシア疑惑は、次期大統領選挙にあってトランプ大統領の当選を阻むと共に、現時点にあってもアメリカの対ロ接近を押さえることができるのですから、一石二鳥の効果が期待されるのでしょう。
 
 そして、ここで問題となるのは、ロシアの本心です。実のところ、大国でありながら、ロシアほど‘玉虫色’の国はありません。第二次世界大戦にあっても、ソ連邦は、共産主義を罵倒し続けてきたナチス・ドイツと突如として不可侵条約を結ぶ一方で、ドイツによるバルバロッサ作戦の開始で両国関係が破綻すると、唯一の共産主義国として単独でドイツと戦う選択肢がありながら、あっさりとプロレタリアートの敵であるはずの‘資本家階級’の国で構成される連合国陣営に鞍替えしています(英仏にあっても、ポーランドを防衛する条約上の義務はあっても、ロシアに対しては同様の義務を負っていない…)。(つづく)
 
 
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