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2007-07-13 15:20

中国の風下に立つ日本

塚崎公義  久留米大学准教授
 坂本正弘氏は「日中の戦略的互恵関係とは?」と題する本欄への投稿(6月6日付け、331号)において、中国側が戦略的互恵関係と呼ぶ構想には「中国に一方的に有利なものが多く、互恵とはほど遠い」とされている。およそ外交においては、出発点として自国に有利な主張を双方が行なうのは当然であり、中国も自然に自国に有利な主張を展開しているのであろう。これに対しては、日本も同様に出発点において自国に有利な主張を打ち出し、交渉に入ることが肝要である。坂本氏が例として挙げている省エネや環境問題について言えば、中国自身の努力が必要なことは言うまでもないが、日本としても相手の困難に際して協力を申し出、その際に正当な対価を確実に要求するとともに、国際社会に対して日本の貢献を積極的にアピールしていくことが肝要であろう。この問題を考える際のキーワードは、「中国の風下に立つ日本」ではなかろうか。

 第一の意味では、アジアの覇権を握るであろう中国に対し、衰退国家として如何なる対応をなすべきかという観点(当欄拙稿140~142号)が問題となろう。歴史認識などの問題は、国民感情のすれ違いにつながりやすく、したがって議論によって解決することが難しく、ビジネスライクな交渉にも馴染まず、国力の差が自ずと物を言う。したがって、中国の風下に立つことが容易に予想出来る状況で如何に行動すべきか、ということが問題となるわけである。しかし、省エネや環境といった問題は、歴史認識などの問題と比べて遥かに単純であり、国民感情といった問題を離れてビジネスライクに交渉することが可能であろう。覇権国家であろうと傲慢になることは許されないし、衰退国家であろうと卑屈になる必要は毛頭ない。相手が困っている際に協力するのであれば、遠慮する必要は無く、主張すべきことを堂々と主張すればよいだけのことである。

 第二の意味では、中国から偏西風に乗って黄砂や有害物質が飛来する位置に日本列島が存在しているわけで、文字通りの風下にあることを如何に考えるかという観点が問題となる。これは、中国の環境対策が日本自身の環境改善に資することを意味している。省エネに関しても、風下と直接の関係はないが、地球温暖化防止や資源価格安定によってやはり日本自身にも役立ち、加えて日本の地球規模の貢献をアピールする機会ともなる。したがって、仮に中国からの対価が過少であったとしても、技術協力などを行なうインセンティブが日本にはある。しかし、だから中国からの対価が過少であっても良いということにはならない。まして、中国側に日本の事情を見透かされて対価を値切られるようなことがあってはならない。むしろ、黄砂等の被害に対して中国に補償を求めるくらいの気概を持って臨む必要があろう。さすがに補償まで求めるのは法的にも難しいかもしれないが、中国側の要求が我田引水であることを考えれば、日本側からも出発点としてその程度の主張を行なっていくという精神は必要なのではなかろうか。
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