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2019-04-18 11:52

リニア中央新幹線にも反対する日本共産党

加藤 成一 元弁護士
 JR東海が建設中のリニア中央新幹線は、東京~大阪間500㎞を最高時速505㎞で走行する超電導磁気浮上式リニアモーターカーであり、日本初の超電導リニアによる超高速鉄道である。2011年に整備計画が決定され、すでに超高速走行試験も実施されている。2027年には東京~名古屋間が完成し40分で結ばれる。そして、2045年には東京~大阪間も完成し67分で結ばれる。現行の東海道新幹線の最高時速は275㎞であるから、約2倍の超高速であり、東京~大阪間が僅か1時間で結ばれることになる。全体の建設費は8兆3000憶円~9兆9000憶円とされ、そのうち公的資金3兆円が国からJR東海に融資される。建設理由としては、1964年開業の東海道新幹線の老朽化や、地震・津波など大規模災害に対処するための代替路線(バイパス)の必要性、経済波及効果などがあげられる。

 このように、リニア中央新幹線は2027年の東京~名古屋間の開業に向けて建設中であるが、日本共産党はこの建設に強く反対し建設工事の中止・建設認可の撤回を要求している。反対理由は、(1)東京~大阪間の輸送需要が大きく伸びていないから、採算性に問題があるのみならず、1時間半程度の時間短縮への国民の要望や必要性がない、(2)地震・津波対策としては、バイパスの建設よりも東海道新幹線の地震・津波対策こそ行うべきである、(3)8割がトンネルで運転手が乗車せず遠隔操作による運行のため、事故や火災・地震など、安全確保に大きな不安がある、(4)強力な電磁波が人体に与える影響も不安である、(5)南アルプス山脈をトンネルで縦断するなど、自然破壊・環境破壊を無視できない、(6)消費電力が東海道新幹線の3倍以上であり、エネルギ消費型の交通体系を導入すべきではない、などというものである。沿線住民の一部からも、国(国土交通大臣)に対して、環境問題などを理由として、工事認可の取り消しを求める行政訴訟が東京地裁に提起されている。

 日本共産党の上記主張を見ると、リニア中央新幹線建設についての、採算性、安全性、環境問題などの指摘を、必ずしも筆者はすべて否定するものではない。したがって、JR東海としては、建設工事を進めるにあたっては、上記の懸念や不安を完全に払拭する万全の対策を講じるべきは当然である。また、完成後の運行についても安全対策に万全を期すべきである。しかしながら、リニア中央新幹線により、東京~名古屋~大阪の三大都市圏が僅か1時間で結ばれるインパクトと経済波及効果は計り知れないのであり、国土の構造を変え、日本の国際競争力の強化と人々のライフワークを変革する契機となるであろう。採算性についても、すでに訪日外国人観光客が3100万人を突破しているところ、21世紀の日本が「観光立国」として、さらに、訪日外国人観光客1憶人を目標にすれば、リニア中央新幹線は「夢の超特急」として日本観光の目玉になり、輸送需要も増え採算性にも明らかにプラスである。また、現行の東海道新幹線は3分間隔で運行されており超過密ダイヤであるうえに、ビジネス関係の乗客が多数であるから、リニア中央新幹線が開業すれば、利便性が格段に向上し、経済効率向上や生産性向上がもたらされる。「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の試算によれば、その経済効果は最大21兆円にものぼる。さらに、万一、東海地方などで大規模な地震や津波などが発生して、開業後50年以上が経過し老朽化した東海道新幹線が長期間運行不能になった場合には、代替路線(バイパス)としてのリニア中央新幹線の役割は極めて重要である。加えて、リニア中央新幹線の建設・開業により、日本が誇る世界最先端の超高速鉄道技術による全世界への超高速鉄道プラントの輸出促進にも有益であることは明らかである。

 日本共産党の反対は、リニア中央新幹線建設についての懸念や不安だけをことさら強調し、上記で述べた21世紀日本における建設の重要性や経済波及効果などのプラス面を一切無視していることである。日本共産党は、古くは、戦後日本の高度経済成長をもたらし国民生活を向上させた、1960年の自由民主党池田勇人内閣の「国民所得倍増計画」に対しても、「独占資本奉仕の反人民的本質を有する」(日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年(上巻)」308頁。1994年新日本出版社刊)などと理由をつけて反対した過去がある。リニア中央新幹線に関しても、日本共産党による反対のためにプラス面を一切無視した極端な「マイナス思考」は、21世紀日本の飛躍的な成長発展にとって明らかにマイナスであるという他ない。
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