国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-07-12 10:38

国際決済銀行(BIS)も円安の行き過ぎを「異常」と警告

鈴木淑夫  元衆議院議員・鈴木政経フォーラム代表
 3月と5月の「百花斉放」で、円安の行き過ぎ(バブル)について注意を喚起したが、最近の日本銀行の推計によれば、円の実質実効レートは遂に1985年のプラザ合意前の水準まで下がってしまった。株価・地価のバブル発生と崩壊、それに続く「失われた10年」という大きなコストを払って進められたプラザ合意後の円高協調政策の結果は、水泡に帰した。

 この行き過ぎた円安に対しては、既にユーロ諸国の政府がG7で不満を表明し、米国議会でも、5月に円安に対する制裁の是非について、下院の公聴会が開かれたが、この程発表された国際決済銀行(BIS)の『年次報告書』(77th Annual Report ー 1 April 2006 ー 31 March 2007」においても、円安がはっきりと問題視されている。

 『報告書』は第8章「結論」のハイライトである「政策は今後どうあるべきか」(Where should policies go from here ?)の中で、円について一つのパラグラフを割き、次のように述べている。「最近進んでいる円相場の下落には、明らかに異常なもの(clearly something anomalous)がある。金融引締め政策は、この事態を直す助けになるかも知れないが(would help to redress this situation)、根本的な問題(the underlying problem)は、今後円高が大きく進むことはないだろうという投資家の強過ぎる確信(too firm conviction)にあるように思われる。釣り合いを取るには(as a counterweight)、1998年の秋にたった2日間で円が対米ドルで10%も上昇し、円キャリ取引を行っていた投資家が多大の損失を被ったことを考えるよう促すのがよいかも知れない(might be better encouraged to consider)」

 BISはバブルという言葉を使っていないが、円高は起らないという強過ぎる確信が、リスクを忘れた円キャリ取引の累積を起こし、異常な円安を招いていると言っているのであるから、バブルが発生していると言っているのと同じだ。日本人はバブルと言うと株価や地価のバブルを想像しがちであるが、経済学の実証研究では為替相場のバブルを対象にした論文が少なくない。為替市場では、これ迄短期、中期、長期のバブルが発生したり、崩壊したりしているからだ。今の円安バブルについても、近い将来若い人の実証研究が出てくることを期待したい。

 なお、言うまでもないが、今の円安が総てバブルだと言っているのではない。大きな内外金利差と内外価格差の縮小という二つの要因と並んで、バブルの要素があると言っているのである。詳しくは鈴木淑夫「利上げで円安修正を、物価は横這いでよい―内外価格差縮小下の金融政策」(『週刊東洋経済』07年7月14日号)を参照されたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム