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2018-11-21 11:02

日本の北方領土交渉はこのままで大丈夫か

飯島 一孝  ジャーナリスト
 シンガポールで11月14日夜、行われた安倍首相とプーチン大統領との日露首脳会談で、北方領土交渉は日ソ共同宣言(1956年)を基礎に本格化されることになった。つまり、日本は北方4島から2島に返還要求を引き下げ、交渉を続ける方向が決まったと言える。森喜朗首相時代の「2島先行返還論」に戻ったことになり、日本側の大幅な譲歩となる。安倍首相は会談後、記者団に「北方領土問題を解決して平和条約を締結する。この戦後70年以上残された課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領で必ず終止符を打つ」と言い切った。安倍首相としては自分の首相任期を考慮して解決する道筋ができたことを喜んでいるが、日本国民からすれば戦後一貫して自民党が進めてきた4島返還要求をおろし、2島で手を打つということに他ならない。これでいいのかという点が最大の問題である。

 プーチン大統領からすれば、当初から2島返還で決着をしようとしてきたので、ようやく日本側の要求を押さえ込んだという面がある。ただ、日ソ共同宣言では「平和条約締結後に歯舞、色丹両島を日本に引き渡す」と書いてあるものの、2島返還を必ずしも約束したわけではない。つまり、共同宣言を基礎にして今後の交渉が続けられ、最大限で2島であり、場合によっては1島、つまり一番小さい歯舞諸島だけになる可能性もある。なぜなら、プーチン大統領は以前から「返還がどういう形になるかは定めていない」との立場を取ってきたからだ。

 一方、日本側からすれば戦後一貫して要求してきた4島返還要求が「最大限2島」になることに対し、国民の間からかなりの反対論が起きることは間違いない。安倍首相はこれまで解決方法について「双方が納得できる現実的な解決案」としか説明しておらず、返還要求をトーンダウンしたことへの説明が必要だ。今回のトーンダウンについて「安倍首相の任期終了の2021年までに決着をつけようという算段」との見方が出ており、自身の政権浮揚策との批判が高まる可能性もある。

 今回の会談では、首相と大統領との2人だけの会談が約40分間に及んだとされる。この密談でどのようなことが話されたか、が重要だ。安倍首相は今後、できるだけ密談の内容を国民に説明し、理解を得る必要がある。個人の利益のために外交を弄んだという批判を避けるためにも、首相には説明責任がある。また、国会でもこの点をできるだけ明らかにして国民の理解を得る必要がある。
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