国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-07-24 12:14

「平成30年7月豪雨」災害を受けて

船田 元  衆議院議員(自由民主党)
 去る7月5日から8日にかけて、西日本の広い範囲で50年に一度、いや未だかつて経験したことのないほどの豪雨が降り続き、200名を超える犠牲者と60名を超える行方不明者を出してしまった。また全国で6000名ほどが避難生活を強いられており、心からお悔やみとお見舞いを申し上げなければならない。自衛隊の災害出動や救援物資の早急な手配、激甚災害の指定による復旧作業など、政府としては迅速な活動を展開中だが、被災家屋の片付けなど細かい作業には、やはり災害ボランティアの活躍が期待される。酷暑の中、水不足で粉塵が舞う過酷な環境下での作業になるので、十分な準備をしなければならない。

 3年前の9月10日、北関東や東北南部を襲った豪雨災害に私たちは遭遇した。バケツをひっくり返したような豪雨が長い時間降り続き、鬼怒川下流の常総市では堤防の決壊によって、町のほとんどが水に浸かってしまった。犠牲者の中には私の学校の教員の息子さんも含まれており、人ごとではないと実感した。その際に初めて耳にした言葉が「線状降水帯」である。風の通り道となった帯状の地域に、次々と活発な積乱雲が発生して、長時間にわたって強い雨が降り続くという現象だ。当時はまず群馬県高崎市や前橋市あたりで発生し、徐々に東に流れて日光市、鹿沼市、宇都宮市、小山市付近に停滞し続けたのだ。

 この度の豪雨禍もまさにこの「線状降水帯」によって引き起こされたわけで、当初は北九州や熊本で発生し、やがて愛媛県西部、広島県東部、岡山県西部、兵庫県北部、京都府北西部、そして岐阜県に至るまで、極めて広範囲に降水帯が猛威を振るった。地域的に見ても降水量から見ても、3年前の北関東とは比べ物にならないほど甚大だった。なぜこのように被害が大きくなったのか。気象庁は、中途半端に張り出した太平洋高気圧の西の縁(へり)を南風が吹き込み、そこに崩れた台風が大量の水蒸気を供給するという、いくつかの要因が重なったからだと推測する。しかし確定的なことは、さらなる分析を待たなければならない。

 ひとつ確実に言えることは、CO2などの温暖化ガスによる地球温暖化が背景にあるということだ。気温が上がれば大気に含まれる水蒸気の量が増える。だからひとたび温度差のある気団がぶつかり合えば、降雨量も当然増える。日本に限らず世界の異常気象の多くが、この温暖化によって説明できるはずだ。温暖化が進めば、毎年のように線状降水帯が猛威を振るうことは避けられないだろう。アメリカが脱退して存続が危ぶまれている「パリ協定」を、世界各国はもう一度評価・実行し、これ以上の被害が出ないようにスクラムを組み直さなければなるまい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム