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2018-07-07 22:36

わが国の死刑制度について感じたこと

犀川 幸雄  学生
 昨日、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫ら7名の死刑が執行された。彼らが主導・実行して有罪判決を受けた13の事件のうち、1995年の地下鉄サリン事件は、20年以上を経た今日でも、日本史上最悪のテロ事件として記憶されている。今回の死刑執行については、海外メディアも日本のメディアの報道を引用する形で速報で伝えられた。オウム真理教や麻原彰晃に関する詳細な解説のほか、日本の死刑制度を批判する報道も見受けられた。とくに欧州諸国からは、「死刑は、非人道的な刑罰であり、犯罪を抑止する効果はない」とし、「日本は死刑制度を存置している数少ない先進国であり、死刑制度の廃止を求めていく」という声が上がっているようだ。

 死刑執行については賛否両論あるが、日本は主要先進国で死刑制度を維持する数少ない国の一つである。日本国内では死刑制度を容認する声が依然多数を占めている。死刑制度容認派の主張としては、「被害者やその遺族の心情を尊重するために必要」、「人を殺すということは、コミュニティが自身への社会的制約と引き換えに保障してくれる権利を拒絶し、またその秩序と正当性を否定することであって、すなわち自らが殺されることを受け入れるのに他ならない」などがある。しかし、これらの主張は、それぞれ「加害者の生命を奪うことは必ずしも被害者の救済を意味しない」、「コミュニティが、その秩序を乱した人間を何らかの形で罰する理由にはなっても、その生命を奪うことまで容認する積極的な理由にはならない」などの点で議論の詰めが甘いと言わざるを得ない。また、死刑の手続きについて詳しい情報公開がなされていないことも見逃してはならない問題の一つであろう。

 死刑廃止が世界の潮流となっている背景には、加害者の根源的な生存権、誤判のリスクの高さ、犯罪抑止との関連性の低さといった理由から、死刑が刑罰として効果的なものではなく、また、「人間は変わり得る」という価値観の広がりとともに、刑罰制度そのものの意義が変わりつつある、という思想が定着しつつあるように思われる。言うまでもなく、死刑制度は、人の命を絶つ極めて重大な刑罰であるとともに、刑事司法制度の根幹や人々の死生観にも関わる重要な問題である。今回の死刑執行を機に、日本国内においても、死刑制度の存廃について改めて議論すべきではないか。
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