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2018-04-12 23:06

岐路に立つ民主主義

新庄 はるか 会社員
 2018年4月4日付けの船田元先生の投稿「『ポスト真実』を乗り切るために」を大変興味深く読ませていただきました。その中で船田先生は、いわゆるフェイクニュースを問題にされ、「我々もフェイクニュースの魔力から自己防衛する必要がある」と締めくくっておられます。これはたいそう重要なご指摘であると思います。なにしろ、ここ数年、いわゆる欧米先進民主主義国の政治がかなりのゆらぎを見せています。「あり得ない」と思われていたドナルド・トランプ氏の米国大統領への当選や英国のEU離脱などは、有権者に「冷静な議論と価値判断」があれば、おそらくは実現しなかったことでしょう。



 民主主義はわれわれ誰もが守らなければならない、大きな政治的原則ですが、しかし、民主主義には大きな落とし穴があることも、最近の世界の動きからわかってきたように思えます。民主主義には、二つの大きな前提があるように思います。その1つは、いわゆる「多数決の原則」です。これは、誰にでもわかりやすいと思います。しかし、民主主義には、もう一つ大事な前提があって、それは、言葉はこなれませんが、例えば、「判断材料の正当性」といったものになろうかと思います。



 この二つの前提は、表裏一体の関係にありますので、判断材料が不完全であれば、その材料に基づいて下された判断は、多数のものであれ、正確な判断とはならない、ということになります。この場合、判断材料というのは、情報と言い換えられます。正確な情報がなければ正しい判断(たとえ判断を下す人に冷静さと良識があったとしても)は下せません。しかし、ネット社会が行きわたった現在社会は、情報過多の世界といえます。一昔前に、情報社会の到来が語られていたとき、「情報は力」でした。つまり、情報をより多く持っている人が強い、ということでした。しかし、いまは情報を多く持っているよりは、不要な、あるいは有害な情報をいかに遮断するか、つまり耳目に流れ込んでくる情報をより少なくすることが大事になってきているような気がしてなりません。



 一昔前は、情報は新聞やテレビを経由してしか、一般市民には入ってきませんでした、新聞やテレビからくる情報が間違いないというわけではありませんが、少なくとも、いい意味でのフィルターがかかっていた気がします。つまりプロの目で情報が取捨選択されていたのです。しかし、いまやフィルターなしの情報がそのまま我々の耳目に飛び込んできます。しかも、船田先生がご指摘のとおり、その情報の発信元が、さまざまな思惑で確信犯的に嘘偽りの情報を大量発信するわけです。それを、かつてのメディアによるフィルターがかかっていた情報になれていた人々が同じように受け入れていたら、見事な情報操作にかかってしまうのです。よって、上で書いた「判断材料の正当性」は大きく損なわれてしまうということになります。おおげさなようですが、今、私たちは民主主義の大きな岐路に立っているというべきではないでしょうか。ネット社会の管理というもろ刃の剣の課題が私たちには突き付けられているといえます。
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