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2018-03-21 06:47

政局大胆予想、6対4で安倍逃げ切り

杉浦 正章  政治評論家
 新聞は「首相の連続3選が確実視されてきた秋の自民党総裁選にも、暗雲が漂い始めた」(読売)のだそうだが、果たしてそうか。民放のノーテンキなトークショーはともかくとして、大新聞が書くとそうなってしまうから怖い。しかし、小生の見たところ、6対4で首相・安倍晋三が逃げ切る。なぜなら政局化は虚弱野党がいくら狙っても導火線になり得なくて、自民党内の力関係によって発生するからだ。いまのところ自民党内は、前回書いたように魑魅魍魎しか露骨な動きを見せる者はいない。証人喚問も佐川が破れかぶれの“舌禍路線”に転ずれば別だが、その気配はない。もう国会は佐川喚問を最後に不毛の論議の区切りを付けるべき時だ。証人喚問は27日になるが、それに先だって自民党大会が25日に開かれる。安倍は党大会で9条改正案など改憲問題を前面に据えて意見集約を進める。総裁演説についても改憲への思いを述べ、全党員の結束と団結をよびかける。いまのところ党大会で、政権を揺さぶるような不穏な空気が組織的に生ずる動きはなく、せいぜい一部出席者の不満げな発言を民放テレビが掘り出して、大袈裟に報道する程度にとどまりそうだ。執行部は党員に発言に気をつけるよう注意喚起すべきだ。公平中立な報道を逸脱する傾向が強い民放にも法的措置を取る必要があるかも知れない。

 一方、政府・与党は前理財局長佐川宣寿の証人喚問を受け入れた。渋る首相官邸を自民党が押し切った形だ。官邸は当初、参考人招致でしのぐべきだと喚問に慎重だった。しかし、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる喚問に応ぜざるを得ないと与党が判断したのは、改ざんへの厳しい世論を無視できなかったためだ。加えて幹事長二階俊博は、ドスが利くのは見かけばかり。その実は小心で、けんかの仕方を知らない。最初から妥協しか考えないから、始末に悪い。しかし、喚問も一見佐川が人身御供になるかのように見えるが、過去の例から見ても参考人招致より喚問の方が切り抜けやすいのが実情だ。過去の証人喚問はロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件などが有名だ。筆者はロッキード事件の喚問を取材したが、証人が「記憶にございません」作戦を展開、野党は歯が立たなかった。今回のように旧大蔵省が舞台となった事件では、98年の「接待汚職」がある。東京地検は、金融機関への検査情報を事前に得ようとする大手銀行・証券会社から過剰な接待を受けた収賄容疑で、同省や日銀などの職員を相次ぎ逮捕、起訴した。同省だけでも112人に停職、減給などの処分が下った。組織が財務省と金融監督庁に分割される原因となった。

 佐川の場合は汚職の嫌疑があるわけではなく、過去の喚問事件と比べてスケールは格段に小さい。書き換え問題は大阪地検が捜査中である。したがって「捜査中の案件については発言を控える」の答弁で切り抜けるしかあるまい。また刑事訴追の恐れのある場合は証言を拒否できる。佐川は事務次官の質問に対してすら、刑事訴追を理由に回答を避けた。野党が狙う政権直撃材料は出ない可能性が高い。証人喚問は厳しいようで攻撃する側は壁が高いのである。野党内には「佐川氏が捜査を理由に答えなければ世論は納得しない」とけん制する声があるが、爆弾発言を期待しても経緯から言って無理だ。政府・与党は、極東情勢が厳しい局面にさしかかっているときに、つまらぬ泥濘(ぬかるみ)に足を取られているときではあるまい。昭恵夫人の喚問を狙う共産党の国対委員長穀田恵二は与党の喚問拒否について「国民の批判はずっと続く」と述べているが、総選挙で9議席減らして12議席になった政党が「国民を代表」して偉そうに発言してもらっても困る。

 そもそも安倍政権は特定秘密保護法や安保法制でいったんは30%台に支持率が落ちたが、その都度回復させてきた。だいいち支持率なるものが朝日や毎日など反安倍メディアと読売・産経など安倍支持メディアで違うのはなぜか。質問者が悪意を持って聞くのが朝日、毎日であるからだ。与党内には「監督する立場の麻生氏の政治責任は避けられない」との声もあり、これで幕引きとなるかは不透明な側面がある。安倍は問題を調査する審議会を民間人を入れて作り、答申を得て財務省改革に着手することも検討してはどうか。その上で、外交問題が一段落したあと夏にも、内閣改造を断行して麻生を副総理から外して党幹部にでも据えた方がよい。総裁3選態勢を整えるべきだ。
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