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2007-05-21 17:50

歴史問題へのヨーロッパ人の大人の対応

藤原 宣夫  団体役員
 ある時、青木周蔵記念館に那須町から招待されて青木周蔵の子孫がオーストリーからやって来た。私は縁あって一夜東京で同君と夕食を共にし、親しく話し合った事がある。子孫であるその好青年の名は、Mag. Niklas Salm-Reifferscheidtという。2002年秋私ども夫婦は同君の居城に招かれて彼のご両親をはじめとして暖かな家族の人々とその城のワインと料理で歓待され一夜を明け方まで語りあった。明治新政府が誕生した頃に長州出身の青木周蔵は医師の養子となり留学したが、プロイセンで法律を学び、明治時代には二度外務大臣に就任した逸材であった。夫人のエリザベートはヨーロッパ貴族名門の出であったが、周蔵の死後那須の別荘を引き払い、娘のハナと周蔵の遺品をオーストリーのLinzに近い
Steyregg村の夫人の城に持ち帰っていた。上記の子孫 Niklas 君はもし価値のある遺品であれば那須の記念館に寄贈したいので見て欲しい、と私どもに相談してきた。その結果は別記するが、此処では後に入手した資料とその夜の話題の一つをご紹介したい。

 1617年からプロテスタントとカトリックのローマ皇帝軍の間で戦われたいわゆる30年戦争、または宗教戦争は、ヨーロッパ全土を荒廃させた。ローマ皇帝の将軍として活躍した騎士団長ワルトシュタイン伯がボヘミアで3人の部下によって暗殺されたのが、1634年2月で、暗殺者の一人はアイルランド出身の将校であった。

 それから400年近く過ぎた2000年の終わりに、たまたまワルトシュタイン伯の子孫でありNiklas君の伯父にあたるエルンスト・ワルトシュタイン伯が暗殺者の出身地のアイルランドのホテルに宿泊したことがある。ホテルから通報された市長は、遅ればせながら急遽詫び状を作成し、暗殺者の子孫が議会で詫び状をワルトシュタイン伯の子孫に手渡す儀式を行う事とした。その日、議会の壇上でワルトシュタイン伯は「自分は詫び状を受け取ることは出来ない。その理由は、自分はたまたま子孫ではあるが、自分が暗殺されたのではないし、又一方では暗殺者の子孫もたまたま子孫ではあるが、かれが暗殺をしたわけではない。子孫には暗殺の罪がまったくないのだから、お互い詫び状を差し上げたり、受け取ったりする理由はまったくみあたらない」と明言したのだった。

 "Where you can't find guilt, you can't have apology because neither exist." この様な儀式をヨーロッパでするとしたら、戦乱が続いたヨーロッパでは毎日何処かで儀式が行われる。その様な儀式をせず現在から将来にかけて平和な世界を築くためには、姉妹都市となるなど前向きの企画を図るべきだろう。ついでに付言すると、ワルトシュタイン伯で思い出すのは、ベートーベンが尊敬した保護者にピアノソナタを作曲し献呈したとされるのは第二十一番ハ長調作品53「ワルトシュタイン・ソナタ」である。このワルトシュタインはフェルドナンドで、エルンストの子孫である私たちの友人Niklasも彼の子孫である。お城の夜では、シューベルトが城でピアノを教えた姫に「アベ・マリア」を献呈したときのピアノを見せてもらったが、一族には音楽との関わりが深いDNAが引き継がれていると思われる。
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