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2017-12-26 18:56

新元号年と西暦年の併用について

松井 啓  元大使、時事評論家
 12月2日各紙は「天皇退位19年4月30日・5月1日改元」の見出しで皇室会議の結果を報道した。現在日本では西暦年と元号年が並行して使用されているが、この記事を見て退位が平成19年と思う人は少ないであろう。天皇は退位が国民の生活への影響を少なくし平静に行われるように希望されている。しかしながら、外国とのコミュニケーションとなると、話は少々難しくなる。例えば、外国訪問中の日本人要人が「私が貴国を最初に訪問したのは昭和48年の8月です」と話した時に即座に西暦に言い直して通訳することは、特に同時通訳の場合、相当の訓練と場数の積み重ねが必要である。日本近現代史で、慶応、明治、大正、昭和、平成、そして新元号と続き、年の途中で元号が変わる場合は通訳泣かせとなる。

 外務省の場合は日常的に諸外国と情報をやり取りし、記録し保存しているので、事務能率の観点から現在の記録は西暦年で統一しており(必要ならば和暦年を併記)、紙の大きさもB5判から国際的標準のA4判に移行した。行政事務を執行・記録・保存の場合は、中央官庁から地方自治体まで、西暦年で記録し、同一サイズの紙を使用することとすれば日本全国の事務能率は格段に向上するであろう。一般市民にとっても、市役所や税務署での手続き、郵便局や銀行の通帳の記録や手続きは、新元号に切り替わった時から西暦年で統一することとした方が混乱が少なくなるであろう。更に、我々日本人が歴史を学ぶ場合も日本史と西洋史、世界史は西暦で統一し、必要であれば1986年(明治元年)、1945年(昭和45年)と併記した方が、日本史と世界史を連動して把握でき、世界の動きとの関連が理解しやすくなる。

 これから外国との交流が加速度的に進み、貿易取引、金融情報、学術文化交流、旅行等を西暦で記すことが、宗教や民族とかかわりなくすでに国際標準となっているので、元号を改める今次機会に、日本国内でも西暦年を一般的に使用することとし、必要とあれば伝統的な日本独自の元号をかっこ書きで併記することで、国民的合意を形成していってはどうだろうか。尺貫法に代わりメートル、リットルが日常的に使われるようになるには5年余りを要したが、西暦の一般的使用はそれほど時間がかからないであろう。

 他方、日本には3月に始まり翌年4月に終わる会計年度とそれに合わせたと推測される学年度がある。数年前に大学の国際化のため学年度は欧米の標準に合わせ9月に始まり翌年8月に終わる制度に変更して、日本の大学生の外国留学あるいは外国留学生の日本への受け入れに時期的ギャップが生じないようにすべきと議論されたが、大学改革、人材確保の観点から再度検討してはどうだろうか。これらの合理化と皇室への敬意は別物であり、日本には特有の年齢の数え方(還暦、古稀、喜寿、米寿、卒寿等)があり、干支にちなんだ年の呼称とそれに因んだ年賀はがき、年男、年女、豆まき、七五三等伝統あるしきたり、神社・仏閣・村落の儀式やお祭りがあり、これらの伝統行事はこれからも保存、継承されていくであろう。
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