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2017-10-24 06:59

希望内部は分裂含みの様相

杉浦 正章  政治評論家
 先に小池百合子を「百叩きの上遠島」と書いたが、仏高級紙フィガロからまで「流刑地の女王」と言われてしまっては形無しだ。無理もない。民進党を希望の党と立憲民主党に分断させた張本人である上に、希望は分裂含みだから、江戸時代なら八丈島に流刑となっても文句は言えない立場だ。フィガロは「一番の敗者は小池氏」とも書いたが、さすがによく日本の政治を見ている。野党は苦悩の再編へと動く。一方圧勝した安倍は1日の特別国会で第4次安倍内閣を発足させる。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。長期政権へと踏み出す。その基本姿勢は憲法改正に軸足を置いているが、与党だけでなく野党を含めた幅広い合意形勢を目指す柔軟性も見せている。

 しかし、一口に改憲と言っても難所の多い谷川岳を登るようなもので、たとえ衆参で自公が3分の2の多数を獲得していても一筋縄ではいかない。安倍は「合意形成のための努力は(野党の)第1党であろうと第2党、第3党、第4党であろうと行っていかなければならない」と野党も含めた取り組みに意欲を見せた。これは公明党が野党第1党との話し合いを重視していたのを、ご破算にした感じだ。なぜなら立憲は55年体制以来最小議席とはいえ野党第1党となり、改憲問題について自民党と鋭く対立しているから話し合いの対象になりにくいのだ。代表枝野幸男は、安倍発言に強く反発して「権力は憲法で縛られるという立憲主義の原則を理解出来ていない人に、憲法を変えさせるわけにはいかない」と言ってのけたのである。従って安倍が立憲抜きでの改憲を目指さざるを得ないのは当然である。安倍の狙いは希望と維新の改憲勢力の抱き込みにある。ところが安倍発言が意図したかどうかは定かでないが、これが希望の分裂含みの流れを加速しそうなのである。なぜなら希望内部は改憲志向の保守派と安倍ペースでの改憲に強く反対する旧民進党系に分断されつつあるからだ。議席欲しさに安保反対の理念を曲げて希望へ参集した民進党系の当選者24人は、無節操がたたって窮地に追い込まれつつあるとも言える。立憲がこれだけ伸びるのなら立憲に回ればよかったというわけだが、後悔は先に立たずである。希望の衣をかぶって有権者を欺けば、たちまち正体がばれてしまうと言う物語はイソップのロバの逸話と似ている。

 いずれにしても希望の内部は遠心力が強く作用しており、これが野党再編の発火点になる公算が高い。自らのブームが総選挙まで続くとみた大誤算の小池は、都知事をやりながら、希望の党のたがを絞めなければならないという、苦境に陥る事は必定だ。パリで小池は「国政のことは国会議員で決めればよい」と発言しているが、そこにはもう投げ出したいという気持ちがありありとうかがえる。代表を投げ出して代わりがいるかと言えば、求心力のある人物はほとんどいない。細野豪志もベテランだが、線が細い。代表代行の樽床伸二もカリスマ性ゼロで、代表が務まるか。前原誠司を代表に迎えると言う線も考えられるが、実現性は未定だ。もたもたしているうちに党が持つかどうかに直面するから、もう誰でもいいということになりかねない。こうした中で何らかの調整役として民進党の籍を残して無所属で出馬した野田佳彦、岡田克也、江田憲司らが院内会派を作り、そこにとりあえず希望から合流するという方式や、民進党が新しい名前で政党を作り、そこに希望の離党者を受け入れる構想などがささやかれている。枝野は立憲を解体する気は更々無いが、来る者は拒まずが基本姿勢であろう。俯瞰すればいずれも民進党勢力再結集を模索する動きと言えそうである。

 いわば理念をそっちのけにしての数合わせ先行と言えるが、野党が繰り返してきた目先を変えるだけの新党が国民の理解を得ることは困難である。枝野も「間違っても数合わせとみられてはならない」と発言したが、本人は元をただせば悪名高き民主党政権の官房長官であり、その体たらくの責任者の一人だ。やはり悪名高き革マルの根城となっているJR東労組などとの交流も過去にあったといわれる。産経新聞の過去の報道によると1996年の第41回衆議院議員総選挙への立候補の際、JR東労組大宮支部執行委員長と「私はJR総連及びJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連帯して活動します」などが記された覚書を交わした、と『新潮45』に掲載されたという。枝野は、覚書は「一般的な政策協定を結ぶ一定のひな型の通り」と述べ問題がないとの考えを示し、JR東労組との関係は「連合の各産別とお付き合いする範囲でお付き合いしているが、それ以上でも以下でもない」と述べた。しかし、枝野は昔JR東労組から4年間にわたって総額404万円の資金提供を受けていたという説もある。これに関連して安倍は去る7月に、「鳩山由紀夫内閣の時に、JR総連やJR東労組について革マル派活動家が相当浸透しているとの答弁書を、枝野氏が行政刷新担当相として署名している」などと指摘している。その枝野が一部有権者の、判官びいきで脚光を浴びた。理念無き数合わせがやがては分裂を招くことは目に見えているが、枝野の発言に反して「数合わせ」をしなければ、野党は力を得ない。いずれにしても先に指摘したように1月1日に政党が成立していなければ政党交付金はもらえないから当面の期限は年内と区切られている。矛盾撞着を抱えて野党は再編へと動かざるを得まい。
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