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2017-08-13 17:53

中国第一主義と日本の役割

松井 啓  時事評論家、元大使
 中国は「太平洋は中米二カ国にとって十分に広い」としてこの地域におけるアメリカの覇権に挑戦し、ゆくゆくは朝貢外交で近隣諸国を掌握していた中華帝国を再興し、Pax Sinica(中国による平和)の構築を夢見ている。中国は経済力では2010年にGDPで日本を抜き世界第2位の経済大国となり、「一帯一路」構想、アジアインフラ投資銀行(AIIB)創設等で政治的経済的権益の拡大に励む一方、軍事力、特に海軍の増強に励み、南シナ海におけるフィリピンとの領海問題に関する常設裁判所の2016年7月の判決を反古紙と称し、この海域を「九段線」で囲み、軍事施設を構築している。中国は1971年10月に国民党政権(台湾)に代わり国連の議席を得て、安保理事会の常任理事国になったのであるが、近年の国際社会での行儀をわきまえない肥満児のごとき振る舞いは、大国としての責任や矜持を自覚しておらす、国連安保理事会の常任理事国の資格はないと断じざるを得ない。

 日本は明治維新以来富国強兵をスローガンにして、国民の生活を犠牲にしてまで軍備を増強し、日清戦争、日露戦争、朝鮮半島の併合、シベリア出兵をし、国際連盟で非難されるや脱退し、五族(日本人、漢人、朝鮮人、満州人、蒙古人)協和の「理念」により満州国を建国する一方、東南アジアへの権益拡大を図ったが、最終的にはアメリカを始めとする連合軍に敗れ、日本の夢は1945年8月に潰えた。中国にはこのような日本の轍を踏まないように、自重して欲しい。8月初旬のアセアン外相会議の機会に河野外相は中国の王外相と初会談をした。その際に王外相の方から南シナ海での中国の自制を促した河野外相の演説に「失望した」との苦言が述べられた由だが、これに対し河野外相が「中国は大国としての振る舞いを身に着けてほしい」と切り返したのは、まさに正鵠を射ていた。外交の世界ではおもてなしや気遣いは無用であり、沈黙は金ではない。

 中国は今後とも資金力を使ってアジア諸国に対し個別に経済的・軍事的進出(経済インフラや軍港等の拠点建設)を図ってこよう。他方、日本が戦後営々と行ってきたアジア諸国への経済技術協力がこれら諸国の経済発展に貢献し、特に東南アジア諸国の信頼を得てきた。今後とも大気汚染等の環境対策、伝染病等の疾病対策、地震や洪水等の自然災害に関する日本の支援や情報提供は、これら諸国の結束を促す一助となろう。アメリカの存在感は特にトランプ政権になってから薄くなってきている、日本はアジアの平和と安定には大きな責任を持っており、地政学的には中露米の三大国に囲まれて朝鮮半島と対峙している。日本は同盟国アメリカを支援しつつアジアのバランサーとしてこの地域の安定維持に積極的な役割を果たしていく必要がある。
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