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2017-07-11 05:35

「行政のゆがみ」はむしろ岩盤規制を放置した側に

杉浦 正章  政治評論家
 前文部次官前川喜平の言うように「行政をゆがめた」のか、地方創生相山本幸三が言うように「一点の曇りもない」のか。衆参両院の閉会中審査をつぶさに聞いたが、両者の主張は平行線をたどった。いったん「ある」と主張したものを「ない」と否定することは、“悪魔の証明”に似て極めて困難だが、第三者の証言があれば概ね証明できる。今回の場合前愛媛県知事と国家戦略特区諮問会議の議員による「ない」の主張が、完璧であり、前川の主張は「引かれ者の小唄」の感を否めないものであった。その主張は憶測と推測が多く、反安倍指向の強い一部新聞や民放など大向こううけを狙う魂胆が見え見えであり、次官たる者の人格を疑う様な発言に終始した。最大の問題点は、前川が次官在職中に加計学院による今治市への獣医学部新設の動きに待ったをかけないで、今になってマスコミ受けをよいことに「決着のプロセスが不透明」などと“反安倍”とみられる発言を繰り替えしていることだ。

 前川発言は都議選結果にも大きく作用して、国政に重大な影響をもたらしている。衆院でも前川は「なぜ次官時代に発言しなかったか」を質されて「内心じくじたる思いがあるし、反省をしている」と答弁した。しかし、事は今更反省して済むような話ではない。次官時代に疑問点があるなら堂々と首相に訴えるのが、その職務であったはずだ。前川は続けて「国民が知らなければ行政のゆがみを是正することが出来ないという考えから発言するようになった」と述べたが、前川の言う「国民」とは誰か。朝日、毎日やTBSやテレビ朝日のことか。勝手に国民という言葉を使われても心ある国民は憤懣やるかたないのであろう。なぜかといえば、前川の言う「行政のゆがみ」はあまりにも独善的であるからだ。むしろ行政のゆがみは、文科省が半世紀にわたって獣医学部の新設を認めず、獣医の独占を許し、「獣医ぼろもうけ」の実態を放置したことにあるのではないか。「岩盤」を死守しようとしたことの方が「ゆがみ」でなくてなんだろうか。その岩盤にドリルで穴を開けようとした安倍政権の改革に、次官在職中に待ったをかけずに、今になって一部の反政府マスコミにこびるがごとく発言を続ける前川は、人間性が疑がわれても仕方があるまい。

 「ゆがみ」発言に対して前愛媛県知事加戸守行が82歳の老体にむち打つように参院で証言に立ち、「10年間にわたり誘致を働きかけたが、熱い岩盤規制で跳ね返され、やっと国家戦略特区の枠で認められた。長年ゆがめられた行政がただされた、と言うのが正しい」と発言した。まさにその通りである。また国家戦略特区諮問会議のワーキンググループの委員を務める原英史は「『加計学園』ありきなどという指摘は全くの虚構であることは、議事録を見ればすぐにわかることだ。根本的な問題は、獣医学部の新設禁止という規制が正しいかであり、従来のゆがみをただすための取り組みを進めたものだ」と証言した。前川は公開されている諮問会議の議事録を読んだことがあるのか。ないのだろう。あれば独善発言を繰り返せなくなるはずだ。さらに前川は、文科省のあきれんばかりの天下り人事の責任をとらされて次官を退任した経緯についても、未練たらたらの発言を繰り返した。参院で官房長官・菅義偉は「昨年11月に杉田官房副長官の求めに応じて説明に来たときに、進退についての意向を示さなかった」と、あれだけの天下り問題が指摘されても、責任を取る姿勢がなかったことを明らかにした。

 さらに菅は「1月に文科省の事務局から定年延長の打診があり、杉田副長官は『難しい』と回答した」ことを明らかにした。これに対して前川は「1月4日には引責辞任を決意していた」と弁明したが、決意していたのなら一刻も早く辞任すべきであったのではないか。こうして閉会中審査は前川の特異な性格だけを浮き彫りにさせて終わったが、朝日は7月11日付朝刊でも「加計ありき疑念消えず」と、大見出しで前川・野党寄りの紙面を展開している。しかし、朝日が「疑念消えず」と、洞察力のなさを露呈するのは勝手だが、審査はこれ以上継続しても、不毛の論議を繰り返し、政権をおとしめる作用を増幅させるだけだ。安倍が出席しても全く変わらない。従って加計問題などでの閉会中審査は、これ以上は不要だ。民新、共産両党など野党もマスコミ受けを狙って空鉄砲を撃つことはいいかげんにしたほうがよい。自民党は逆に極東情勢に関する閉会中審査を要求すべきではないか。極東情勢に目を向ければ、狂ったような指導者がICBMと称するミサイル実験を断行し、核実験も行おうとしている。野党は閉会中に衆参で議員を集めながら、国民の生命を如何にして守るかの議論は素通りしていいのか。
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