国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-04-25 06:35

民共両党は、国際的「テロ戦争」に目を向けよ

杉浦 正章  政治評論家
 「草」とは、忍者で敵地に住み込み、敵地の住民と同化して、2代、3代に渡って破壊テロのチャンスを狙う者を指す。その北朝鮮の「草」が、いざ朝鮮動乱ともなれば、新幹線や原発を狙って大がかりなテロを行いかねない時である。ところが民進、共産両党は、これを未然に防止するテロ等準備罪法案の国会審議で、法相ごときの“斬首作戦”を展開している。この国の野党の国際感覚のなさは今に始まったことではないが、すぐそこにある危機ですら見えない。野党は戦前の治安維持法による監視社会に戻ると言うが、もし、オリンピックで未曾有のテロが成功すれば、日本は間違いなく監視社会に逆戻りする。極右が台頭して、警察国家になるかもしれない。それこそ本当の危機ではないのか。大義は政府・与党にある。テロ法案は早期に成立を図るべき時だ。

 共産党の田村智子は「国会周辺を歩くことが花見なのか、組織犯罪のための下見なのか、どうして分かる」と質問した。愚問の最たるものだ。狙いは平和に花見をする一般国民が捜査の対象になるとこじつけたいのだろうが、花見の国民1億2千万人を捜査するほど警察は暇ではない。花見であろうが何であろうがテロリストが集まれば、捜査当局が動くのは当然だ。そのような捜査は江戸時代からあった。由井正雪によるテロ未遂事件だ。歌舞伎では丸橋忠弥が千代田城のお堀の深さを小石を投げて図ろうとしているのを、松平伊豆守が見とがめて、忠弥の“内心”を読みとった。その場の逮捕ではないが、捜査を進めて一網打尽にした。皇居や周辺の花見で刑事が勘を働かせて、怪しいとわかれば逮捕につなげる。これは捜査の常識ではないか。内心が読み取れなければ、敏腕な刑事とは言えない。

 民進党は「保安林でキノコを採る行為を処罰することが、テロ対策なのか」と、これまた愚問を提示した。277本の対象法案には、森林法の森林窃盗罪が含まれることを「理由が分からない」と鬼の首を取ったように追及するが、日本は憲法31条の罪刑法定主義をとっていることすら理解していないのか。人を犯罪者として処罰するためには、法律によって、 あらかじめ罪(構成要件)と罰を明確にしておかなければならないという原則だ。これがなければ、逮捕も起訴も出来ないのだ。なぜ森林法かと言えば、仮に松茸を3000本盗めば、十分テロ資金になる。ましてや鉱物資源などを盗めばテロ資金は潤沢だ。自民党政調会長茂木敏充はNHKで「犯罪組織が水道水に毒物を混入した場合、その毒物を準備しても現行法体系では処罰できない」と述べた。テロ等準備罪法案の端的、明快なる説明である。野党は、早くも地下鉄サリン事件を忘れたのかと言いたい。犯罪組織オウムがサリンを製造し、保有しているのをキャッチしておりながら、それだけでは逮捕に踏み切れなかった結果が死者13人、負傷者多数という未曾有の事件になったのだ。

 野党による政府追及の手本となるのが、テロ法案を「共謀罪法案」と誤報し続ける朝日の社説だが、この社説も法相が愚鈍だから法案を通してはならないという、驚くべき反対論を展開している。4月22日の社説では「法相が自分の言葉で説得力のある説明をし、国民の理解を得る。それが法案に責任を持つ立場としての責務だ。それができないなら閣僚の資格はないし、法案は通してはならない」と主張している。朝日は法案の中身ではなく、1法相の資質で、法案の可否を決めるのか。社説子は、自ら議会制民主主義を否定していることが分かっていない。さらに社説は「野党の反対を押し切り、刑事局長を政府参考人として出席させることを委員長の職権で採決し、賛成多数で決めた。参考人の出席は全会一致で決めるのが慣例で、それを踏みにじったのは現行制度で初めてだ」とも批判した。しかし、朝日は出先記者の原稿をデスクが直さないのだろうか。専門性が要求される法案においては、専門家である刑事局長の答弁が当然必要とされる。その方が質問者と答弁者が「知らぬ同士のチャンチキおけさ」にならなくて、審議がスムーズに進むではないか。本末転倒の社説とはまさにこのことだ。

 世論調査を見ても、朝日の“偏り”が際立っている。朝日が15、16日に実施した世論調査では「テロ法案」に対する賛否が、賛成35%、反対33%と拮抗(きっこう)した。しかし、読売のほぼ同じ時期の調査では、賛成が58%で、反対25%を大きく上回った。産経・FNNでも法案に賛成57・2%、反対32・9%だった。毎日の調査では賛成49%が、反対30%を上回った。明らかに聞き方や質問者の態度による違いが生じている。今は間違いなく「テロ戦争」の時代だ。幸いにも日本にはISやアルカイダによるテロは発生していない。しかし、これらの組織が存在する限り、オリンピックは絶好のチャンスである。現にISは日本名指しでテロ実行を宣言している。国際的なテロの高まりに対して、米欧では警察力の強化によって社会秩序を守るべきとする思想が台頭している。これはややもすると、社会の安全のためにはプライバシーの自由や個人の権利を制約されても仕方がないという動きに直結しかねない。フランスでは極右のルペン支持者が増え、米国では移民の入国を制限するトランプイズムが多くの国民に支持されている。全てがテロ戦争対策である。野党は目先の重箱の隅を突っつく前に、この世界情勢に目を向け、テロ法案反対を撤回すべきである。国民への風評戦術が秘密保護法や安保法制で大失敗して、支持率が低迷している原因となっていることを想起すべきである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム