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2017-03-24 10:49

ヤラセだった北方四島元島民のプーチン大統領への手紙

飯島 一孝  ジャーナリスト
 昨年12月の日露首脳会談で安倍首相がプーチン大統領に手渡した北方四島元島民の手紙が大統領を感激させ、四島への自由往来をさらに進めるきっかけになったとされているが、その手紙がヤラセだった疑惑が浮上している。もし本当だとすれば、ロシア大統領ばかりか、日本国民まで愚弄する行為である。真相解明を急ぐべきだ。問題の手紙は、首脳会談の3日前の12月12日に首相が千島歯舞諸島居住者連盟の脇紀美夫理事長ら元島民7人に会い、首脳会談に備えて彼らの意見を聞いたことが発端。元島民は連名で首相に大統領へ渡すための手紙を託したとされる。首脳会談の直後、首相はテレビ各局の取材を受けた際「会談でこの手紙を大統領に渡す」と、その場で手紙を読んで、感銘し「元島民がもっと自由に故郷の島に往来できるよう道を開く」ことを約束したと力説していた。

 首相としては、北方領土返還交渉自体の成果はなかったので、元島民の自由往来のさらなる前進をアピールして会談の成果を少しでも大きくしたかったのだろう。ところが、肝心の手紙が未だに非公開になっている上、手紙にサインしたはずの元島民たちの多くはコピーを手元に持っていなかったという。しかも、あろうことか、元島民団体の千島連盟を含む多くの関係者が手紙の存在すら事前には聞かされていなっかったというのだ。一体何が起こったのだろうか。この問題については、北方領土問題の研究者として知られている岩下明裕・北海道大教授が雑誌「マスコミ市民2月号」で詳しく書いているので、それを参照したい。幻の手紙となった元島民の手紙は、その後のメディアの取材により、以下のように書かれていたとされる。元島民たちの願いとして「生きているうちに故郷に帰りたい。島で朝を迎えたい。いつでも墓参りしたい。自由に島に行きたい」と書いたという。だが、念願の北方領土問題の解決については「プーチン氏こそが北方領土問題を解決してくれるものと確信しています」とあるだけで、北方領土の返還については、具体的に言及すらしていないとされる。

 この内容から岩下教授は「この手紙がある種の狙いを持って書かれているのは明らかだろう」と指摘し、「元島民たちのこれまでの闘いを少しでも知る者からすれば、このような手紙が島民全体の気持ちを代弁することはありえない」と断言している。この手紙についてはNHKが何度か報道していて、児玉泰子・千島連盟理事が元島民たちに手紙と思われる紙を配っているシーンが流されている。実は、首相と会う前日に元島民たちがホテルに呼び集められ、この手紙を見せられて、同意を求められたという。その場にロシア語に翻訳された手紙も用意されていたとされ、手紙を準備する過程でNHKの関係者が深く関わっていた可能性を示唆している。

 この問題で北海道新聞は2月7日付けの社説で「この手紙は、官邸主導で元島民7人が集められ、用意された文書をもとに作られた。千島連盟の役員も同席したが、組織として意見集約する余地はなかった」と指摘し、事実上ヤラセだったことを認めている。官邸がこの手紙の作成を仕組んだとすれば言語道断だ。また、NHKが手を貸していたとすれば、メディアの倫理が問われる。双方ともこうした疑問にきちんと答えるべきだ。
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