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2007-04-12 18:42

連載投稿(1)経済のグローバル化と人材養成競争

鈴木智弘  信州大学経営大学院教授
 冷戦終結後、急速に進展したグローバル化によって、ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源の国際移転が急速に進展したと言われている。最も国境を越えにくい経営資源と言われたヒトについても、急速にグローバル化が進展している。ヒトのグローバル化は、わが国の教育、特に筆者が勤務する大学においても、重要な問題となっている。「百花斉放」では、各界の論客により、外交問題、安全保障問題が活発に議論されているが、大学に勤める者として、少々毛色の異なった問題、即ち、国家間の人材養成競争、特に高等教育について問題提起をしたい。

 教育問題は、昨年来、イジメ問題、愛国教育問題、高等学校での未履修問題など、大きな社会問題となり、教育再生会議の動向が社会的な注目を浴びている。しかし、それだけでなく、この数年、わが国の産業界から、大学教育に対する不満が顕在化している。その根底には、政治・経済・産業のグローバル化が進展する中で、わが国の企業や産業の国際競争力が衰えてきたのではないかという懸念があり、産業界の一部には、自社の競争力の低下の一因として、「旧態依然の象牙の塔に籠もる大学教育」を挙げ、大学教育について、明らさまな不満を表明するようになっている。企業あるいは産業の競争力の源泉として、ヒトが重要であることは当然であるが、わが国でも、付加価値の低い単純労働者としての「人材」ではなく、高付加価値の製品・サービスを生み出す原動力としての有能な「人財」を国籍、性別などを問わず獲得することが必須となっている。

 企業誘致でも、土地、水利、電力などと並び、重要な進出誘因は「優秀な労働力」(人財あるいは人材)の存在であるが、この「優秀」という言葉の意味が、産業・技術の高度化と共に、意味が変わりつつある。また、企業の持続的な競争力の維持という観点から考えれば、必要な人財を労働市場でスポット買いするだけでは不十分であり、長期的な観点で社内養成していくことも依然として重要である。これは、「国力」でも同じであり、グローバル化が進展する中で、国家の競争力を維持するためには、有能な(何を基準に有能というのかについては、今後詳細に論じる)人財を養成することがキーのひとつであり、それは、国家間の人材養成競争と言えよう。この国家間の人材養成競争において、大学がどのような役割を果たすべきか、現状を紹介しながら、小論を展開してゆきたい。(つづく)
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