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2016-08-01 11:25

「終戦の日」を「猛省の日」に

四方 立夫  エコノミスト
 毎年8月になると戦没者への鎮魂並びに平和への祈りが捧げられ、日本ならではの美しい光景が展開される。然しながら、平和は鎮魂と祈りだけでは守ることはできない。ドイツではナチの親衛隊であった当時20代の若者が90代になった現在、その責任を問われ、裁判にかけられている。又、イギリスではイラク戦争参加の是非を問う調査が7年がかりで実施され、当時のブレア-首相の責任が厳しく糾弾されている。

 然るに我が国においては、先の大戦に関しその原因の究明、責任者の追及、及び再発防止策の構築が十分であるとは言えず、極東軍事裁判において「戦犯」が処罰されたことをもって終了し、「日本は米軍に基地を提供し、米軍は日本を守る」ことを所与とし、中国及び北朝鮮の脅威に直面しているにも関わらず、国民の危機意識は低い。

 最近になって大戦に関する資料が続々と明らかになる中で、何故に軍部の事前のシュミレーションで敗戦との結論が出ていたにも拘わらず開戦に踏み切ったのか、かかる重大な決断は如何なる議論を経てなされたのか、軍部に対するガバナンスの何処に問題があったのか、など現代の多くの日本の組織にも内在する問題を深堀りし、同じ過誤を繰り返すことのないような抜本策の構築が喫緊の課題であり、それなくして我が国が直面する脅威を乗り切ることはできない。

 我が国では先の大戦を語るに際し、ともすれば慰安婦、南京虐殺などの個別の事象にのみ焦点を当てた議論が展開されることが間々あるが、大戦は明治維新後の日本の急速な近代化並びにそれに伴って勃発した日清戦争及び日露戦争を経た、一連の歴史の文脈のなかで捉えるべきものである。日本の開国と戦争は当時の欧米列強の帝国主義への対抗策としてもたらされた面もあり、日本の近現代史は世界史の一部として大局的に把握することが重要である。現在においても学校では歴史は「暗記科目」とされているが、本来は事実を検証し、それに基き「考え、そして論じる科目」であるべきである。学生から社会人に至るまで全ての国民が「終戦の日」を「猛省の日」とし、今ここにある危機を乗り切るべく歴史から学ぶ時である。
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