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2016-06-29 16:52

防衛費は「人を殺すための予算」か?

加藤 成一  元弁護士
 6月26日のNHKテレビ「日曜討論」で、日本共産党の藤野保史政策委員長は、防衛費について「人を殺すための予算」との重大な発言をした。これは、公党の政策責任者による20数万人の自衛隊員及びこれを支持する圧倒的多数の日本国民に対する許し難い暴言であり、侮辱である。単に発言を取り消して済む問題ではないであろう。

 「人を殺すための予算」発言は、共産党の本質であろう。なぜなら、共産党は、これまで、いかなる安全保障環境の変化があろうと、日本を守るための防衛力の強化には一貫して反対し、防衛予算の大幅削減や、自衛隊そのものの廃止さえも主張してきたからである。ところが、共産党は、急迫不正の主権侵害や大規模災害などの場合には、「憲法違反」であるはずの自衛隊の必要性に言及し、さらには「活用」さえすると言ってきた。これが矛盾でなくて、何であろうか。そして、この矛盾は、自民党政治がつくった矛盾であると自己正当化さえする。

 自衛隊を「憲法違反」とする共産党の主張を貫けば、当然、自衛隊法も「憲法違反」であり、「憲法違反」の自衛隊法に基づく航空自衛隊による領空侵犯に対処するためのスクランブル(緊急発進)活動、海上自衛隊による領土・領海を守るための海上警備活動、陸上自衛隊による災害救助活動なども、法律上すべて「憲法違反」となり、これらの活動の一切が「憲法違反」として「無効」な行為となる。したがって、共産党は、「自衛隊違憲論」を主張する以上は、自衛隊によるこれらの「憲法違反」の活動の一切の禁止を主張し、政府にもそのような活動の禁止を求めなければ筋が通らない。しかるに、これまでに共産党が自衛隊によるこれらの「憲法違反」の活動の禁止を主張したり、政府に禁止を求めたことは一度もない。このことは、共産党が、口では自衛隊を「憲法違反」であると主張しておきながら、実際には、日本防衛や災害救助のためには自衛隊を欠くことはできず、自衛隊によるこれらの「憲法違反」の活動は必要であると認めているからである。

 共産党は、日本国の存立と日本国民の生命を守るために必要な自衛隊を「憲法違反」であるとして否定し、その状態を解消するための憲法改正に強く反対するのみならず、自衛隊の廃止まで主張している。ひたすら憲法を上位に置く共産党の「自衛隊違憲論」や「自衛隊廃止論」は、矛盾に満ちた本末転倒の観念論であると言わなければならない。現実無視の逆立ちした見解であると言わざるを得ない。到底、日本共産党に日本の安全保障を託し得ないことは、何人の目にも明らかであろう。
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