国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-06-17 13:05

消費税増税延期について

船田 元  衆議院議員(自由民主党)
 安倍総理は先月末の伊勢志摩サミットで議長役となり、世界経済が「リーマンショック直前の状況」であって、このまま手を打たないと危機に陥るという認識の共有に腐心した。実際に「リーマンショック直前」という言葉を使ったか、使わなかったかが話題となっているが、相当な危機感を露わにしたことは間違いないだろう。しかしG7の首脳、とりわけ英国、フランス、ドイツは「そこまでの危機ではない」と、最後まで同意しなかった。確かに総理が現場で示した数字は、リーマン直前の数字に近いが、そういう数字を集めたに過ぎず、経済全体のパフォーマンスはそこまで深刻ではないというのが、大方の見方である。「リーマンショッククラスの経済危機」でない限り、消費税再増税延期はしないと説明してきた総理としては、延期決定の国内向けエクスキューズとして利用したかったのではないだろうか。

 私は常々、消費税再増税は予定通り実施すべきだと主張してきた。その理由は言うまでもなく、2020年のプライマリーバランスゼロを達成し、財政再建の確実な一歩を踏まなければならないこと。また増加の一途を辿っている社会保障費には一定のタガを嵌めなければならないものの、介護や保育の充実など、新たな課題に取り組むためには、安定した財源の確保が不可欠なことである。もちろん増税だけして、他は何もやらないというつもりはない。リーマンショックほどではないが、中国をはじめとする新興国の景気後退や、資源価格の低迷による需要不足など、海外要因が日本経済回復の足を引っ張っていることも事実である。このまま行けば、折角増税したのに減収になる危険性も否定出来ない。増税と合わせて適切な景気刺激策を実施することは不可欠と考えていた。

 今回の増税延期については、今後幾つかの懸念がある。一つは現下のマイナス金利と消費税増税延期により、「日本経済がこんなに弱いのか」という国際的風評が巻き起こるのではないかということ。またその実際の被害として、日本国債の格付けが低下し、長期金利が上昇するのではないかということである。そうならないためにも、一層の経費節減と機動的な財政出動が望まれる。さらには政治的流れである。第二次安倍政権スタート以来、盟友と言われた麻生財務大臣が、今回の延期決定を事前には知らされず、あるいは知っていても顔を潰された感が強く、激怒したことである。「安倍一強」の原動力であった官邸の結束力に亀裂が生じてしまった。ここしばらくは参議院選挙で一枚岩で動くが、その後はどう展開するか、目が離せなくなった。

 野党の混迷振りに助けられている感もあるが、今後の政権運営はもう少し丁寧に行う必要がある。自民党内の議論も、今まで音無し過ぎたのではないか。ものが言えない雰囲気から、言える雰囲気に変えていかなければならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム