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2016-06-07 06:47

自公が「及び腰」なら参院選に直結:舛添辞任

杉浦 正章  政治評論家
 まるで「不適切知事」の様相である。第三者として都知事・舛添要一に雇われた弁護士は支出の「一部不適切」を指摘したが、その実体は一部どころか「山ほど不適切」である。問題はこの知事を抱えて、自民、公明両党は参院選挙を切り抜けられると思っているのかということだ。及び腰の姿勢からはそうとしか思えない。舛添が6月15日の都議会会期切れを狙っているのは明白だが、ひょっとしたら自公もそれを狙っているのではないかと思いたくなる。その結果はどうなるか。今日の全国紙の一面トップが示すように、ことは都民だけの関心事ではなくなっている。全国民の関心事だ。自公の無為無策で参院選の争点が出来た、と野党は小躍りするに違いない。自公はむしろ「舛添辞任」の先頭に立つべきであり、これをうやむやのまま参院選を勝ち抜けると思ったら甘い。

 驚いたことに、舛添が都議会議長らに熱海の別荘を売る方針を明らかにした後、自公の都連幹部が口裏を合わせるかのように「別荘を売ると言った」と述べたことだ。別荘を売ろうと売るまいと、舛添の資産の価値が変わるわけではない、と都民の誰もが思っているにもかかわらず、両党幹部が「売る」と強調したことは、これで潮が引くとでも思っているからだろうか。それとも舛添から事前に「売りますから」とでも話があったことを垣間見せたのだろうか。事々左様にうがちたくなるのは、自公の都連は舛添問題で全く信用がないからだ。今回の弁護士の会見をつぶさに聞いて分かったことは、舛添の弁護士への調査依頼の目的だ。「違法とは言えない」の一言を得るための茶番を演出したのだ。確かに弁護士はその通りの発言をした。もともと政治資金規正法も政党助成法も支出内容の是非についての規制はない。正確に金額や支出先を明記していれば、違法性を指摘できない仕組みになっている。過去に支出の是非で有罪判決が出たことはない。舛添はそこを狙った。

 しかし、弁護士の調査の結果、思惑が裏目に出て、ブーメランとして舛添の脳天を直撃した。「不適切」と指摘された支出が山ほど出てきたからだ。ホテルなどへの不適切な支出6件に始まって、飲食費14件、美術品106件、漫画の購入などなどである。美術品に到っては弁護士・佐々木善三が「数があまりにも多すぎる」と思わず漏らしたほどである。これはまさしく、公人としての自覚を欠く舛添の金銭感覚を、白日の下に露呈したとしか思えない。佐々木は、こうした「違法性はないが、不適切な政治資金」の支出に関して、「私は法律家であっても、道義的な責任の感覚は一般の方と変わらない」と発言した。雇われた方があきれる公私混同の支出ぶりである。法律家がここまで指摘するのは、限りなく道義的責任において「クロに近い」と警鐘を鳴らしているのだ。

 この結果、舛添の“狙い”は裏目に出た。もともと問われているのは違法性ではなく、政治家としての道義性なのであり、会見結果はその道義性論議に確実に飛び火する形となったのだ。火の勢いは増しこそすれ、衰える様相にない。そこで再び及び腰の自公の対応になるが、両党都連の言い訳ほど馬鹿馬鹿しいものは無い。「4年後のオリンピックとかち合わせになる」というが、いま都政の尻に火が付いているのに4年後のことなど考えている暇はない。立派な知事選挙をオリンピックに見せることも、民主主義国日本の在りようではないか。「勝てる候補が見当たらない」にいたっては、屁理屈にすぎない。勝ち負けは別にして、都政そのものが問われているのであり、正義を行うかどうかを政党レベルの利害得失で考えるべきではない。こうした自公の先延ばし論の背景には、追及する側にマスコミの矛先が回ったら手がつけられなくなる恐れがあることだろう。例えば質問者自身の支出を暴かれたら、ほぼ確定的に舛添と同様の事例を抱えており、質問が成り立たなくなるからだ。要するに、多かれ少なかれ皆がやっていることなのである。

 今後の日程を見れば、15日が都議会の閉幕である。本会議は7日に代表質問、8日に一般質問があるが、事前のすりあわせが慣習となっており、言いっ放しで終わる可能性が強い。焦点は13、14日に予定される総務委員会だが、舛添は「ああだ、こうだ」で逃げ切ろうとするだろう。都議会会議規則は4条で会期延期を可能としているが、参院選の公示は22日だ。公示直前まで延期して土俵の幅を広げれば、舛添の逃げ切りを防ぐことが出来るかもしれない。要するに、自公両党は、ここで躊躇してはならないということだ。もちろん舛添を担いだ責任はあるが、都民にも「不適切な知事」を選んだ責任がある。いま都民の7割以上が求めているのは「舛添の即時辞任」であり、「新知事選出」なのである。自公はそこを見極めて、舛添の首を取りに行く方向に転換すべきである。自民党執行部は、愚鈍なる都議会自民党に「教育的指導」を行うべきであろう。こういう時の出番は副総裁・高村正彦が一番適役だ。前知事・猪瀨直樹を辞任させたのは石原慎太郎との会談だが、今度は高村か、幹事長・谷垣禎一が前面に出て、辞任への説得をすべきだろう。そうした「懲悪」の姿勢が、参院選を前にして何より求められているのが自民党なのだ。
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