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2016-05-19 17:24

「日米安保なき日本の総合安全保障」政策を考える

四方 立夫  エコノミスト
 遂にドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補となることが確実となった。最早トランプ大統領誕生の可能性を否定することはできない。仮に同氏が今回本選でクリントンに敗れたとしても、共和党員の大多数が同氏を支持したという事実は残り、今後第二、第三のトランプが登場する可能性もあり、怒れる多くの米国民の声を無視することはできない。「日米関係は盤石だ」として、安閑としてはいられない。戦後我が国は「吉田ドクトリン」に則り「軽武装=経済重視」で経済的繁栄を謳歌し、「日本は米国に基地を提供し、米国は日本を守る」ことを長年に亘り当然のこととしてきたが、今やその大前提が覆ろうとしている。

 米国民の怒りの中核には、ごく少数の人間が自由貿易の恩恵を被り、大多数の一般国民はその被害者であるという認識がある。1980~1990年代にかけて、日本の自動車の対米輸出が拡大し、ロックフェラー・センターをはじめとする米国の伝統的資産が買収され、日本脅威論や日本の安保ただのり論が盛んに唱えられたが、トランプは将にそれを復活させ、日本からの米軍基地の撤収、更には日本の核武装さえも促している。かかるトランプの外交政策は、オバマ政権の唱える”Asia Pivot” 政策を見切り、中国の南シナ海における一方的な埋め立て及び軍事化を利するのみならず、ニカラグア運河の建設をはじめとして米国の裏庭における中国の活動まで加速させることになるだろう。

 更に、仮に我が国が核武装することになれば、NPT(核不拡散)体制は無力化し、世界中ばらまかれた核は「北朝鮮~パキスタン」ルートからISIS、 アルカイダ、タリバンなどの手に渡るであろう。それが米国自身の安全保障を著しく脅かすことになるのは自明である。我が国としては、誰が米国の大統領になろうとも、日米同盟が日本のみならず米国にとっても安全保障上必要不可欠のものであることを、米国の指導者や有識者に強くアピールすることが最重要課題となる。それでもなお米国が戦前の「孤立主義」「モンロー・ドクトリン」に逆戻りする可能性を排除することはできないことから、我が国としては、上記啓発活動と並行して、日米安保なき日本の総合安全保障政策を真剣に検討すべき時が来た。

 まず第一に、我が国の防衛費は長年に亘りGDPの1%程度であるが、これをNATOが加盟国に求めている2%に早急に引上げることが求められる。第二に、オーストラリア及びインドとの戦略的パートナーシップを強化しなければならない。そして、最後には、やはり憲法の改正が必要である。日本が自国の安全を自らの手で確保することができるようにすることが、喫緊の課題である。最早、我が国には、これまでのタブーに固執している余裕はない。
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