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2007-03-12 09:28

プライバシーの限界

大藏雄之助  評論家
 プライバシーというものが日本で大きく問題になったのは、三島由紀夫が1960年に発表した小説『宴のあと』でモデルとされた有田八郎元外相の訴訟においてだった。一審判決はプライバシーの権利は憲法で保障されているとしたが、原告の死亡により遺族との間で和解が成立したために、判例としては確立しなかった。その後も類似の事件は幾つも起こったが、それぞれ事情が違うので、名誉毀損とプライバシー侵害の差も曖昧なままだった。最近では、住民基本台帳、街頭防犯カメラ、個人情報保護法などに絡んで、プライバシー保護が議論されている。

 選挙によって公職についている人(議員等)は、その地位にもよるけれども、社会生活に関してはプライバシーは放棄したものと考えられる。それが嫌なら立候補しなければよい。任命制によるものでも、日銀総裁や中央省庁の事務次官など行政的な執行権を有する人物も、個人の秘密はかなり減殺される。民間の営利企業や団体でも、相当影響力があるようなら、代表者や主要幹部が身元を洗われるのはやむをえないであろう。芸能人やスポーツ選手の場合はなかなか難しいが、スキャンダルを人気の材料として売り込むこともあるから、「有名税」としてある程度つつき回されるのは仕方がないのではないか。

 無名の一般人では、血縁関係・財産・収入・学業成績・病歴などを不必要に暴露することは許されないが、それは公共機関に保管されているデータや防犯カメラに写った映像の管理を厳しく徹底すればすむことであろう。

 アイスランドは人口30万人ほどの小国であるが、生まれると同時に生年月日と性別による個人番号が登録され、血統・血液型・遺伝的体質(DNA)などが記載され、現住所・学歴・病歴・職歴などが順次追加されていく。だから交通事故にあっても生存率は高く、犯罪の解決は早い(凶悪犯罪そのものが少ない)。善良な市民にとってこのような制度はむしろ好ましいと思うのだが。
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