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2016-04-23 01:10

(連載1)アベノミクス:農業改革と課題

島田 晴雄  千葉商科大学学長
 今回はアベノミクスの成長戦略の目玉である農業改革を取り上げたい。それは2014年6月に閣議決定された第二次成長戦略の中でしっかり記述されている。農業改革はいわゆる「岩盤規制」の改革であり、多くの改革項目の中で最も困難なものとされてきたが、第二次成長戦略はその課題に正面から取り組んだ。この改革は2013年頃から準備され、戦略の発表後も改革作業は続けられているが、困難な対象であるだけに、課題も多く残されている。

 改革の眼目はつぎの3つに集約される。それは(1)減反政策の廃止、(2)農協の改革、(3)農地政策の改革である。以下、それぞれの改革の意義と、改革がどこまで進められ、何が残されているか、を述べよう。

 (1)減反政策とは、米の作付けを減らした(減反)農家には、減反による減収の相当部分を補助する政策である。戦後の日本は、占領下の農地改革で生まれた多数の小規模自作農家を保護するため、食糧管理制度の下で政策的に米価を決めてきた。しかし、1970年代頃から、国民の食生活パターンの変化が進み、需給バランスが逆転した。そこで米の過剰供給を回避して農家の所得を守るため、減反を奨励したのが、この政策である。

 減反制度では、しかし生産を減らしても農家の所得は維持されるので、農家の生産性向上への意欲を削ぐ弊害がある。TPPが実施されると農業も国際競争にさらされるので、米も含め生産性向上が求められる。そこで2013年11月に政府は減反制度を5年後に廃止することを決定した。これは”岩盤規制”で守られた農業の既得権益に踏み込んだ画期的な改革だが、この改革の本旨は生産性が高く技術革新力のある農家や農業者を生み出すことにあり、そのためにはそうした農業者育成のための総合的な戦略をこれから本格的かつ強力に進める必要がある。これは減反政策廃止以上に大きい残された課題である。(つづく)
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