国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-03-03 09:38

(連載1)G20と消費増税

角田 勝彦  団体役員、元大使
 市場を活性化する国際協調政策の実施のため安倍政権が期待した上海の主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、2月27日、世界経済の安定に向けあらゆる政策を総動員するとの姿勢を打ち出したが、具体性に乏しく、市場は先行きに危機感を抱き、円高・株安の流れに歯止めは掛かっていない。政策協調も順調といえない。議長国中国も、人民元の値下がり進行への国際的懸念にかかわらず、3月1日、4カ月ぶりに0・5%預金準備率を引き下げる追加緩和策に踏み切った。もはや日本でも2017年4月の消費税率の10%への引き上げの延期は不可避だろう。3月27日結党を予定している民維新党が、与党より先に引き上げの延期乃至中止を打ち出せば、安保法廃止法案に勝る支持率かさ上げ要因になると思われる。

 2012年末に第2次安倍内閣が発足して「アベノミクス」が始まってから3年余経った。企業業績が改善し、個人消費や設備投資が増える景気の「好循環」がなかなか動き出さず、政権が目指す「実質年2%成長」の実現にはほど遠い状況である。雇用情勢は約20年ぶりの改善をみせている(1月の完全失業率3.2%。なお1月の有効求人倍率(季節調整値)は1・28倍と24年ぶりの高水準)が、1月の消費支出は前年同月比3.1%減と冴えない。前期比0.4%減に沈んだ2015年10~12月期の実質国内総生産(GDP)も個人消費が同0.8%減と数字を押し下げる「主犯」だった。

 月例経済報告では、「景気は緩やかな回復基調が続いている」との基調判断になっているが、先行き不安から消費より貯蓄が優先されているのである。さらに留意すべきは、3月1日財務省発表の2015年10~12月期の法人企業統計が4年ぶりに減収減益になったことである。世論調査でもアベノミクスを「評価しない」が過半数になった(2016年2月に読売調査57%、日経50%)。

 さてアベノミクスは「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「規制緩和などの成長戦略」で脱デフレを目指してきた。主に頼ってきた金融緩和も1月のマイナス金利移行で限界に近づいている。世論調査(2月日経)でもマイナス金利移行を「評価しない」は53%、「評価する」は23%である。しかも、この奇策も海外経済情勢悪化(米国サービス部門の低調なデータ発表、ユーロ圏の銀行への新たな懸念浮上、中国経済悪化、原油価格低迷など)に打ち負かされた。円は下落するどころか118~125円圏内を飛び越えて114円辺りで取引されている。アベノミクスは外需の高まりに依存できなくなっている。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム