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2016-02-16 06:46

消費税延期へ内堀まで埋まってきた

杉浦 正章  政治評論家
 もはや消費税先送りへの外堀は埋まった。内堀も埋まりつつある。流れは、筆者が新年4日に誰よりも先駆けて予想したとおり「消費税先送り、ダブル選挙」へ一段と加速しているかのように見える。問題は、首相・安倍晋三が「2017年の10%への増税はリーマンショックのような事態が生じない限り延期しない」と言いきっていることだ。しかし、これは経済の現状にどこから光を当てるかで変わる。政治的には「消費税先送り、ダブル選挙」を実現するために、「今がリーマンショックのような事態」と得意の側近学者を使った“理論武装”をすれば済むことだ。このところの東証急反発などはテクニカルな反発に過ぎず、中国経済の落ち込みと原油安の構造的株価押し下げ要因に変化はない。外堀が埋まったとはどういうことかと言えば、外部から延期論が出ていることだ。まずマスコミでは「安倍ちゃん命で深情け」の産経が「安倍晋三内閣はきっぱりと来年4月からの消費税再増税中止を宣言し、GDP600兆円早期実現への道筋を示すべきだ」と報じたのが皮切りだ。最近では証券市場に波及し、急速に消費増税の先送り論が台頭してきている。「上げられない」という見方が“常識”となってきているのだ。株価の大暴落を目の辺りにして、マーケットでは「株価の暴落はリーマンショック級とみてもおかしくない。だから先送りしかない」(証券会社幹部)との見方が強まっているのだ。

 内堀とは何かと言えば15年の消費税アップの時と同様に、側近から凍結論が出始めていることだ。「あのときと同じ手口」を使っているのだ。安倍側近の内閣官房副長官・萩生田光一がテレビで「リーマンショック並みの事態になれば延期は否定出来ない」と述べれば、内閣官房参与の本田悦朗が2月16日付朝日に「来年4月の消費税率10%への引き上げを凍結すべきだ。これこそ最大の景気対策となる」と明言した。この断言は大きな意味を持つ。マイナス金利の黒田パズーカが線香花火となった以上、アベノミクスを成功させるためには、凍結は確かに最大の景気対策になる。「黒田パズーカ」よりも「安倍弾道弾ミサイル」の方が効き目があることは確かだ。問題はこれらの発言を安倍が指示して言わせているのかどうかだ。いくら側近とはいえ首相の了解なしに発言するわけはないと思うのだが、そこは魚心と水心でツーカーの発言だろう。ただし意外性がなければ効果は半減だから、安倍は当分「リーマンショックがなければやらない」という路線を死守するふりをするだろう。来年度予算案が通らなければ政策の大転換はやりにくい。考えてもみるが良い。

 増税凍結をやらないで来年4月から予定通り実施する選択とはどういうことか、とあえて言えば、アベノミクスの自滅に他ならない。とてもバブルの崩壊がもたらした中国の景気の失速は早期に回復する可能性はない。相手国があるため、ただ一つ信頼できる貿易統計は1月も14%の落ち込みだ。7.9%と発表したGDPは事実上マイナスであった、との見方もでている。消費増税を「実施できるよう景気を回復させる」(財務省・麻生太郎)などという発言は希望的観測に過ぎなくなりつつある。内閣の看板政策であるアベノミクスを自滅に追い込んでまで、財務省の言うとおりの施策を推進すれば、そこには官僚主義があって政治がない。逆に凍結すればどうなるかだが、まず選挙対策にはもってこいだ。消費の落ち込みは去年4月の増税がいまだに尾を引いているが、このままだと来年の増税でさらに落ち込むだろう。底なしの悪循環に陥る恐れがあり、大企業の活況や失業率にも影を落とすことは間違いない。逆に凍結すれば、国民の喝采を受けることは必至であり、国政選挙にも好影響を来す。企業の好調は税収を拡大させ、増税凍結を相殺する。アベノミクスは好調を維持出来るだろう。アベノミクスを維持さえ出来れば国政選挙は圧勝間違いない。

 いまテレビで朝から晩までやっているのが、自民党議員や閣僚のゴミネタをさも大げさな問題であるかのごとく取り上げる「安倍貶(おとし)め報道」のやり方だ。議員辞職する不倫の宮崎謙介は度し難いが、沖縄担当相・島尻安伊子の歯舞を「歯。えー、何だっけ」くらいを、悪意を持って大げさに取り上げる話か。環境相・丸川珠代が追加被曝(ひばく)線量の長期目標として示している年間1ミリシーベルトについて、「何の 科学的根拠もない」と発言したのは、逆によく言ったと思う。1ミリシーベルトは民主党政権が朝日などの“圧力”を受けて除染の長期目標として採算度外視で決めたものであり、ポピュリズムの極みの政策に他ならない。総務相・高市早苗の「電波停止」発言も、反安倍政権一色の民放の報道ぶりを見れば、放送法違反すれすれであり無理もない。民主党政権下でも同様の閣僚発言があったのを忘れたかと言いたい。こうした傾向は、すきを見せない長期政権に対して、主に民放など一部マスコミが「嫌がらせ」のように展開する報道のやり方だ。まるで佐藤内閣のころにマスコミが実態の乏しい黒い霧ムードの醸成に専念したことと酷似している。佐藤はついに怒って「黒い霧解散」をぶちかまして、血路を開いた。国民は賢明であり、安倍内閣支持率は朝日の最新調査ですら40%で横ばいだ。サミット前の外交や重要法案処理をつぶすことになる4月の解散などは荒唐無稽(むけい)だが、夏にダブル選挙をやれば、安倍長期政権は確定する。 
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