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2016-02-05 07:06

キャスター降板は時代の風潮を反映

杉浦 正章  政治評論家
 「今日夕方、帰りにでも日刊ゲンダイでも読んでみてください。これがメデイアが萎縮している姿ですか」と首相・安倍晋三が衆院予算委で名指ししたので、ゲンダイを読んでみた。あるある。巻頭特集で「詭弁と居直りに拍手!? 喜劇的な安倍政権の高支持率」と見出しを取って「各社の世論調査の結果は、この国の倒錯ぶりを浮き彫りにしている」と、なんと安倍内閣の高支持率にまで噛みついている。安倍は午前の委員会での答弁だから、当然ゲンダイを読んでいないが、予測は的中した。「世論調査の結果がけしからん」と書くノーテンキなメディアは世界的にもまれだが、ネットでも購読できる。読めば、反安倍の急先鋒の実態とレベルが分かる。それにつけても安倍はゲンダイにまで目を通しているとは恐れ入った。安倍は「毎晩の放送を見てもらえれば分かる」とも答弁したので、報道ステーションを見て見たら、これも的中した。毎日が書いた「遠藤五輪相に予算化要請、創業者が献金」を取り上げている。古館伊知郎のコメントは「我々としても相当検討しましたが、法律上何ら抵触していないとのことで、問題はないというのが現在の見方」と、毎日報道を一応否定した。ところが、その後がふるっている。「ぷんぷんにおうのも正直なところです」と付け加えたのだ。「ぷんぷんにおう」というのは、「疑惑が大いにある」と言っているのと同じであり、放送法で定められている「公正な報道」を抽象的な表現ですれすれのところでかいくぐり、安倍政権に一発食らわせている。巧妙さというか、悪賢さが習い性となったコメントだ。

 報道ステーションは最近、映像でも極めて巧みな反安倍姿勢を貫いている。2月3日の予算委初日は全部見たが、波乱はほとんどなく、平穏そのものであった。ところが、ステーションの映像編集にかかると民主党の追及で予算委が緊迫している場面になるのだ。これも巧妙に世の中を左に誘導する映像編集技術と言うしかない。質問者の民主党・階猛は「言論機関が権力者の意向を忖度(そんたく)し、権力者への批判を控えるようになるのではないか。現に今も安倍政権に批判的なテレビキャスターやコメンテーターが次々と番組を降板している。民主主義の健全な発展にもマイナスだ」と指摘した。たしかに古館、NHK「クローズアップゲンダイ」の国谷裕子、TBS系の報道番組「NEWS23」のアンカー・岸井成格などが次々と降板する。自民党内でこれらのキャスターへの批判が強いのは確かであり、自民党からNHKや民放幹部への「偏向報道批判」の指摘もたびたび行われている。筆者は、後でも触れるが、これらのキャスターは「左傾化」の傾向が強いと見る。とりわけ安保法制や安倍の会見発言などをめぐっての批判が、キャスターやコメンテーターらから出されるが、民主党ばかりか共産党の主張や論理をそのまま踏襲しているケースが多い。

 さらに粗暴なまでの政見批判を繰り返すのが、TBSの日曜早朝番組「時事放談」だ。総じてTBSの報道姿勢を反映してか、常連は反安倍のバリバリを用意している。藤井裕久、武村正義といった爺さんたちが、理路整然と間違って、床屋談義並みの「爺放談」を展開している。一番ひどいのが「婆放談」の経済評論家・浜矩子だ。概して経済評論家の予想は当たったためしがないが、浜はことごとく外れている。2011年に「2011年は1ドル50円時代が到来する」と予測し、『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』という本を出版した。また、2012年1月にも「2012年は1ドル50円時代が到来する」と予測していたが、2016年になるのに実現していない。2014年1月にも「年末の日経平均株価が1万円を割る」と予測したが実現せず、15年末にも「1万円を割る」と断言。新年は株価急落を番組で「ざまあみろ」と相変わらずのゲスの極みの暴言を繰り返している。この「ざまあみろ」発言はTBS関係者によると1万円割れ予想で視聴者から批判が強かったことの裏返しだとのことだ。しかし、1万円割れにはほど遠い。アベノミクスを「アホノミクス」とこき下ろし、視聴者の笑いを取ることには長けているが、こんなレベルの評論家をおだて上げて、しゃべらせるのが司会の御厨貴。最近はワンパターンでマンネリ化している。

 「間違ってもいいから、批判してくれ」というのがTBSの報道姿勢なのだそうだが、素朴な視聴者が浜のような評論家の話をうのみにして、株を売り買いしているというところに考えが及ばないのだろうか。階猛は質問で「萎縮の事例を申し上げる。NHK会長の籾井勝人が『政府が右と言うことを左とは言えない』と発言している」と例に挙げた。しかし、この籾井の発言は、報道への知識ゼロからくる「自粛」であり、態度の横柄さは萎縮とはほど遠い。報道機関の出身者なら口が裂けても言わない言葉だ。国会答弁からみても、就任以来発生しているNHKの様々なスキャンダルからみても、籾井は知性も知識も乏しく、世界的にもまれな大報道機関を指揮できる器ではない。階が籾井に面と向かって「あなたには資質がない。やめた方がいい」と発言したが、こればかりは共感を呼ぶものがあった。自民党内の空気も辞任させるしかないというムードが強い。安倍は一刻も早く会長人事に取り組むべきだ。

 委員会質疑を見て、時の政権とマスコミの関係、とりわけNHKや民放の政治報道の現実を述べてきたが、自民党はともかく、政府がNHKや民放の報道方針に直接的な介入をしたケースは極めて少ない。過去には、民放各社に政権交代を実現するために偏向報道を促した「椿事件」くらいのものだろう。今回のキャスター交代に政府の意向が働いたと言えばもっともらしいが、長年報道に携わった経験から言って、そんなことを政府が行えばすぐに週刊誌にばらされて、言論の自由への干渉批判へと直結する。そこまで安倍もやるわけがない。ある民放幹部が降板の理由について、「視聴者の反応が変化してきている」と漏らしている。右傾化と言うより、民主党政権の羮(あつもの)に懲りて、「脱左傾化」の反応が強いと分析する。にもかかわらす、古館、国谷、岸井らの姿勢は相も変わらぬ左翼至上主義であり、時代の風潮にそぐわなくなってきて降板することになる、と見るのが正しいだろう。要するに、古くさいのだ。
  
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