国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-02-03 18:32

(連載1)軍事力大国主義に依存するロシアとその象徴プーチン

袴田 茂樹  日本国際フォーラム評議員
 最近のロシア問題で気になる動きがある。それは、油価の下落、対露経済制裁などでロシアの経済や国民生活が急速に悪化しているにもかかわらず、プーチン大統領の強気の対外政策によって、彼の支持率が急上昇し約90%にも達していることだ。実はこの両者には密接な関係があるのだが、それは後述するとして、最近のロシアの対外政策、特にその軍事色の強まりを紹介したい。ロシアにおける軍事色の強まりは、意図的に宣伝されている「ロシアは敵国に包囲されている」という伝統の被害者意識とも密接に結びついている。そして、ロシアの対外政策においては、「情報戦もきわめて重要だが最終的には軍事力がすべてを決める」という、これまた伝統の考え方が強まっているのだ。そのような軍事色の強まりに関して、具体例を幾つか紹介しよう。

 第1に、昨年12月3日の恒例の大統領の年次教書は、異例の内容だった。通常は経済問題が中心だが、今回はトルコによるロシアの戦闘爆撃機撃墜事件(2015.11.24)の犠牲者の家族もクレムリンに招かれた。そしてプーチンの最初の言葉が、国際テロと戦うロシアの軍人たちへの感謝の言葉であり、それに続いて犠牲者への黙とうが捧げられた。そして、1時間の演説の最初の15分は、感情的ともいえる激しいトルコ批判の言葉が続いた。

 第2は、日本で言えば新年を迎える除夜の鐘の直前に、毎年大統領がテレビで行う新年の挨拶が異例であった。年頭の祝辞を述べるのだが、昨年も一昨年もロシア軍に対する言及はなかった。ところが今年は、「今日はとくに国際テロと戦い、遠い国でわが国益を守っている軍人たちに祝日のお祝いを述べたい」などと、発言の半分が陸軍、海軍、空軍で国を守っている軍人たちへの賞賛と感謝、そして戦勝70周年を祝う内容だった。

 第3として、とくに筆者の目を引いたのは、トルコによるトルコ領空侵犯のロシア爆撃機撃墜の後、ロシアのマスメディアで何回か想起された皇帝アレクサンドル3世(帝位(1881-1894))の次の言葉だ。「我々は常に次のことを忘れてはならぬ。つまり、我々は敵国や我々を憎んでいる国に包囲されているということ、我々ロシア人には友人はいないということだ。我々には友人も同盟国も必要ない。最良の同盟国でも我々を裏切るからだ。ロシアには2つの同盟者しかいない。それはロシアの陸軍と海軍である。」(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム