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2007-03-05 17:43

日本版NSCへの私の要望

角田勝彦  団体役員
 安倍首相は、2月27日提言された「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」最終報告を歓迎し、来年4月の日本版国家安全保障会議(NSC)発足を目指し、今国会に、現行の安全保障会議を衣替えする形で安保会議設置法改正案を提出する由である。

 日本版NSCは、首相、官房長官、外相、防衛相の4人(及び事務局のまとめ役となる国家安全保障問題担当の首相補佐官)で構成され、毎月2回以上開催されて、官邸の主導で、外務・防衛両省の縦割りを越えた総合的な国家戦略を策定するとされている。また、情報収集・分析の客観性を保つため、この政策立案部門とは別に、内閣情報分析官の新設などが政府の情報機能強化検討会議(議長塩崎官房長官)によって検討されている。要するに、NSCの本旨は、情報と結論の共有にある。最終決定権者である首相が、複数の選択肢の中から最善のものを選ぶのを助けることにある。

 四条秀雄氏は、この日本版NSC導入について、3月3日の寄稿で、日本人論という文化的観点からコメントされたが、私も、法的・現実対応的視点から、いくつかの希望を表明したい。なお外交・安全保障には、純外交は別にしても、武力攻撃への防衛力強化(自衛隊など自力中心)、同盟による防衛力強化(日米安保)、集団的安全保障(国連など)の3レベルがあり、各々の追求は相互背反する可能性があることを忘れてはならない。

 1.混乱が生じるのを避けねばならない。
 米国のような大統領制の国でも、キッシンジャー、パウエル、ライスは、国家安全保障担当大統領補佐官だけでは済まず、国務長官となった。我が国のような議院内閣制の国では、官房長官、首相補佐官、情報分析官などは、外務・防衛両省との良好な関係の構築にいっそう留意する必要があろう。官邸のリーダーシップというが、首相が外相及び防衛相などに指揮命令する形式をとるべきで、首相補佐官などが両省を指揮命令することは避けねばならない。幸い、「官邸機能強化会議」最終報告は、この指揮命令権を認めず、また関係省庁の権限を変更しないと明記している。なお内閣官房(外政審議室)と本会議事務局の関係など詰めるべき点があろう。ところで米国の国家安全保障担当大統領補佐官の日本側カウンターパートは誰になるのだろうか。

 2.手を広げすぎてはならない。
 事務局の規模は10~20人になるようで、少ないとの批判も出ているようである。問題は人であり、賢者一人でも充分なときもあろうが、予定されているテーマ、(1)外交・安保の重要事項に関する長期的な基本方針、(2)複数省庁が関係する重要な外交・安保政策、(3)日本有事など外交・安保上の重大事態への対処に関する基本方針、のすべての討議を準備するのには、一人では無理である。しばらくは当面の大事である北朝鮮問題に絞ってはどうだろうか。なお、たとえ官僚が優秀であるとしても、官僚機構の重層化は愚の骨頂であろう。しかし、事務局員には民間専門家や自衛官も含まれるようだが、語学と在外勤務経験は不可欠だろう。

 3.閣内統一を図れ。少なくとも二元外交を防止せよ。
 本会議の目的が結論の共有に有る以上、首相は最終的には人事権を行使しても閣内統一を厳守させるべきである。なお、二元外交はダブルスタンダード外交とは違うが、ダブルスタンダード外交の時こそ政府の見解統一が必要である。
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