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2015-12-14 00:00

(連載1)ASEAN経済共同体(AEC)関連レポートについて

池尾 愛子  早稲田大学教授
 東南アジア諸国連合(ASEAN)のASEAN共同体構築を目指しての新しいブループリントと関連レポートが利用可能になっている(http://www.asean.org/ -> Communities)。ASEAN共同体は、ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN経済共同体(AEC)、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)の3つからなる。AECが最も注目されているが、もちろんASCCとAPSCの構築も大切である。それでもアセアン域外を含めた研究機関と国際機関の協力が注目され、力作揃いのAEC関連レポートを簡単に紹介しておきたい。

 本体のASEAN事務局(ジャカルタ)作成『AECブループリント2025』には、ASEAN憲章や『AECブループリント2015』で主張されてきた「単一の市場と生産基地」建設構想等が引き継がれていて、この地域の経済戦略の際立つ特徴となっている。『AECブループリント2025』の作成には、ASEAN・東アジア経済研究所(ERIA、本部ジャカルタ、ASEAN+6)、ラジャラトナム(S. Rajaratnam)国際研究スクールと南アジア研究所の研究からの助言、他の利害関係者からの意見・情報を考慮したと明記されている。

 「単一の市場」については、1990年代以降のASEAN自由貿易地域(AFTA)構築開始以来、域内の関税引下げ、非関税障壁の削減が軸となり、AFTA発表後に加盟したカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV)での実現に期待がかかっている。一方、「単一の生産基地」構想は「アセアンでのサプライチェーンの構築」や「東アジアの国際分業」とも言い換えられることがあるように、多国籍企業による海外直接投資(FDI)がアセアン全体に流れ込むことが期待されている。ただし国営企業の存続を明言する加盟国があり、官民の協力(public-private partnership、PPP)の役割が注目されているので、外資規制・FDI誘導が今後も続くと予想される。

 『アセアン投資レポート 2015』は、ASEAN事務局と国連貿易開発会議(UNCTAD、本部ジュネーブ)の投資企業部門の協力の下で、オーストラリア政府の支援により準備された。1960年代から1970年代半ばあたりにかけて、いわゆる南北対立が激化していた。1980年代になると、一部の途上国が、先進国およびその多国籍企業との良好な関係を構築し始めて、進出企業と市民の間で摩擦が起こるのを防ぎ、少なくともそうした地域では南北問題が緩和していたように思われる。UNCTADはこうした「南北」間の歴史から学び、先進国の多国籍企業のFDIが途上国の経済成長に寄与しうることを最初に「発見」した国際機関であるといえよう。((つづく)
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