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2007-03-01 09:50

日米安保50周年の盛大な祝典を準備すべし

奈須田敬  並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
 まずもって冒頭に提案したい。3年後の2010年(平成22)6月23日は、現行日米安全保障条約締結50周年に当たる。日本政府は、早くとも遅くともない今の時機に、米国政府と協議し、盛大かつ真剣・前向きな祝典の準備に一歩踏み出すべきである。日本国際フォーラムはそのための行事企画のペースメーカー的役割を果たすべきだと思うがいかがであろうか。

 顧みれば、周知のように、1960年安保改正の立役者は時の総理大臣岸信介である。しかし、岸首相の背後にあって激励支援をおしまなかったのは吉田茂元首相であった。次の史料は貴重なものの一つである。「御渡米御苦労千万ニ奉存候、何ニしても日米親善ハ我外交之基調、先以て反共之線ニ徹せられ度、・・・何卒此機会ニ日米国交の為一段之御努力切願之至ニ候・・・御帰朝之上の御成功談、今より相楽居候」(『吉田茂書簡』中央公論新社)

 昭和35年(1960)1月12日、日米安全保障条約調印(1月19日)のため渡米する岸信介氏におくられた吉田書簡の一節である。6月23日、藤山外相、米国側マッカーサー駐日大使の間で、新安全保障条約の批准書交換が行われ、同日発効した。「私はこの日午前10時から開かれた臨時閣議で『人心一新、政局転換のため首相をやめる決意をした』と発言した。・・・このあたりの出来事は今思い出しても感慨無量なものがある」と、岸氏は、嵐のような数日来の出来ごとを次のように回顧している。

 「6月18日から19日の朝にかけて、私は永田町の首相官邸で過ごした。18日の夜になって私は、官邸に集まっていた各閣僚を、それぞれ役所に帰えした。官邸が暴徒に襲われる危険性があったので、各閣僚の身の安全と共に職務が差しつかえのないようにするためである。弟の佐藤栄作だけが残った。『兄さん、ブランデーでもやりましょうや』と言って瓶とグラスを持ってきた。兄弟二人深夜の首相官邸でブランデーをなめながら、自然承認の時刻が至るのを待っていた」(『岸信介回顧録』広済堂出版、昭和58年11月)

 歴史の一頁を飾るドラマチックな一幕というべきであろう。それらの事実は、おそらく当時の吉田茂の腹心であった佐藤栄作(のちの首相)から吉田の耳に伝えられたであろう。新安全保障条約について吉田が書いた次の一節こそ傾聴すべきであろう。

 「一言にしていうと、新条約はより強固な基礎の上に、より広い分野で日米の友好関係を発展させるものとなっているのである。安保条約の締結以来、この条約への批判もしくは非難として、各方面であげられる声を聞いてみると、安保条約には自主性がない、相互性がない、防衛の確実性がない、アメリカの軍事行動に巻き込まれる危険がある、といった調子の消極的な上すべりの議論の域を出ていない。そして実質的に日本の防衛や極東の平和のため、アメリカと力をあわせる段になると、かれこれ細かい言い懸りをつけて、特に協力におろそかになる。まことに身勝手な議論である。そんな根性で微妙な国際政局に臨むならば、日米の友好と信頼は強化されるどころか、逆に日本国民頼むに足らずとの気持ちを相手方に抱かせるようになろう。今日の日本人は、十年前の日本人より、もっと頼もしいと自然に感じさせるような言動をとってほしいものである」(吉田茂『世界と日本』番町書房、昭和38年7月)

 さて、冒頭の提案に戻る。泉下の吉田・岸両元首相は、どう思われるだろうか。
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