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2015-11-13 05:38

公明が“躍進共産”に受け身でたじたじ

杉浦 正章  政治評論家
 かつて自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予測したが、2010年代後半も「自共対決」を軸に展開しそうな雲行きとなってきた。現在公明党が自民党の“代理戦争”の形でバトルを展開しているが、論戦といい、地方選挙といい、押され気味だ。なぜかというと支持母体である創価学会に安保法制を推進した公明党を批判する層があり、その急所を共産党が突く戦術をとっているからだ。実に巧みな作戦であるが、おそらく公明党は態勢を立て直すだろう。一方で、とばっちりを食うのは共産党に接近している「岡田民主党」だ。共産党に安保批判票を掘り起こされ、支持基盤を取られる危険性を内包している。政党支持率から見る限り、一強自民に「第二強の共産」が目立ち、他党はかすんでいる。

 共産党が巧みなのは一強自民を直接相手にせず、自民と安保で共闘した公明を狙い撃ちにしていることだ。その作戦は8月頃から始まった。共産は安保たけなわの国会審議をフル活用して、地方選挙で公明を責め立てた。仙台市議選で書記局長・山下芳生が「公明党支持者の中に戦争法案に強い危機感を感じる人が多い。その気持ちをくんだ運動を発展させたい」と、まさに他人の懐に手を突っ込む作戦を展開した。すぐさま公明党代表の山口那津男は「各政党の支持団体などについて、他の政党がとやかく言って、運動に取り込む姿勢はいかがなものか」と反論したが、受け身であることは否めなかった。その結果共産党は、仙台市議選の3選挙区トップ当選を果たした上に、10月の宮城県議選では議席を8に倍増させて、県議会第2党に躍り出た。事実上の公明大敗北の図である。こうして公明党の共産党に対する怒りは頂点に達し、これが噴出したのが、10月25日のNHKの日曜討論だった。

 筆者も見ていて、既に書いたが、番組終了間際になって、公明党政調会長・石田祝稔が突然「ちょっと一言、私も」と声を荒げて発言、「50年も60年も自衛隊は違憲だとか、日米安保廃棄と言っていたのを、それを脇において選挙で一緒にやりましょう、というのはおかしい」と共産党批判を展開。これに対して共産党の政策委員長・小池晃は、「これだけ立憲主義と憲法を守らない政権を倒すためには、緊急課題で団結するのが政党の責任だ」とカエルの面に小便のごとく受け流した。このやりとりについて「しんぶん赤旗」は「平和の党を看板にしながら自民党とともに戦争法を推進する、自らの無責任さには思い至らない石田氏の滑稽さが浮き彫りになった場面」と勝ち誇ったような論評を加えた。

 もともと公共両党は支持層が似通っており、古くから党員獲得競争や激しいビラ合戦を展開してきた。こうした中で1974年、共産党の支持者であり、創価学会会長・池田大作と対談をしたこともある、作家松本清張の斡旋もあり、両党は関係正常化に向けて相互不干渉を定めた「創共協定」を結んだ。しかし対立は収束しなかった。1980年には、創価学会の顧問弁護士・山崎正友を中心とした学会員が、共産党委員長・宮本顕治宅を盗聴した事件が発覚して、両者の対立は決定的となり、協定の更新は行われなかった。

 その宿命の対決が「平和の党」の看板争いのごとく急浮上して展開しているのが公共対決の現状だ。公明党はかつてない党基盤の危機にひんしており、参院選挙に向けて態勢を立て直さざるを得ない状況に直面している。しかし、組織としての創価学会に弱体化の傾向は少なく、テコ入れをすれば参院選に向けて基盤強化は達成できるだろう。自公対共産の対決で、あおりを食らっているのが民主党だ。地方選挙を見ても民主党が食われる傾向を示し、民主党は「安保法制反対」の受け皿になっていない。共産党がすべての安保批判票を平らげているのが実情だ。代表・岡田克也が参院選挙に向けて共産投票に“舌なめずり”しており、昨日書いたように党内右派が治まらない。事実上党内抗争に発展しつつあり、読売の調査でわずか7%という支持率もあって、いまや「落ち目の三度笠」でどこへゆくかは風次第だ。こうして自公対共産の対決が軸となって参院選も戦われることになるが、煽りを食らうのは民主党という構図になりそうな気配だ。


 
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