国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-11-04 10:21

(連載1)米中の「にらみ合い」は続く

角田 勝彦  団体役員、元大使
 今さら、共和党大統領候補などの勇ましい演説に影響されたとも思えないが、米国オバマ大統領の対外姿勢に変化が見られる。10月15日にアフガニスタン駐留米軍の2016年末での撤退を断念する方針を発表したのがそのひとつだが、27日に米海軍のイージス艦が南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が埋め立てた人工島の12カイリ以内の航行を開始したことが注目される。9月に公式訪米し経済関係強化で融和を目論んだ中国習近平国家主席は、首脳会談でオバマが南シナ海問題での自制を求めたのに対し、「南シナ海の島は昔から中国の領土だ」と全く取り合おうとしなかったといわれる。オバマの決心を甘く見たのだろう。

 米国はこれは「航行の自由」のための作戦であるとして、領有権については「どの国にも肩入れしない」と中国に説明しつつ、今後も「四半期に2度かそれ以上」の頻度で継続すると述べている。中国は今回の進入に対し「強烈な不満と断固たる反対」を表明したが、具体的行動としては軍艦2隻による追跡と警告にとどめた。国内強硬派のメディア上の動きも押さえているようである。米国と同様、中国も偶発的にせよ軍事衝突は避けたい方針だろう。軍部も戦って勝てる自信がない以上自制せざるを得ないだろう。

 習主席の権威は傷ついたが、人工島は残っている。東南アジア諸国連合(ASEAN)が年内に発足させる共同体の10カ年計画「ASEAN共同体ビジョン2025」の草案が最近明らかになった。南シナ海問題を念頭に「ASEAN主導のメカニズムによって海上の安全保障を強化する」と明記している。具体策には触れていないが、一部加盟国と中国の争いを、ASEANが主体となって解決することに意欲を示している。これが打開への道になるかも知れない。

 なお11月1日の安倍総理と李克強・中国国務院総理との間の日中首脳会談で、防衛当局間の海空連絡メカニズムの早期運用開始に向け互いに積極的に努力していくことや東シナ海資源開発問題に関し「2008年合意」に基づく協議再開を目指すことも合意された。公表されないが南シナ海問題も討議されたようである。尖閣諸島近くでの中国の行動について、この機会に何かの規制ができないだろうか。さて10月24日、国連は創設70年を迎えた。潘基文事務総長は、記念討論会で「国連の青い旗は今も人類全体にとって希望の印だ。(貧困撲滅などの)目標達成に向け強い国連が必要だ」と強調した。しかし、安全保障面においては、ウクライナ問題に見られるように、国連の集団安全保障体制でなく、覇を求める多強の対立への回帰が見られる。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム