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2007-02-20 17:40

安全保障問題としての少子化を考える

秋元 一峰  海洋問題研究者、元海将補
 少子化は、国の社会構造のみならず、防衛体制や国際安全保障構造にも変動をもたらす大きな問題である。少子化に関する柳沢厚生労働大臣の発言に対して、野党やマスコミが過剰とも思える反応を示した。しかし、言葉尻をつかまえて大騒ぎしている場合ではない。柳沢大臣の「産む機械」発言については、確かに失言だったとは思うが、大臣自身も「喩えが不適切かもしれない」旨を断って発言しているのだから、私などは、笑って済ませる寛大さがあっても良いと思うのだが・・。次いで、「結婚して子供を欲しい健全な・・」に対して、「産まない女性は不健全か?」と噛み付いた。逆は必ずしも真ならずと言う。当たり前のことだが、「産まない女性は全てが不健全」とはならない。「産まない女性も健全だ」と言うのに対して、「では、産む女性は不健全か?」と噛み付いても良い理屈になる。つまり、屁理屈だ。

 そもそも、個人の権利をいとも簡単に是認する社会、「ダブル・インカム・ノーキッズで贅沢を」や「収入は低いが、フリーターの方が楽(結果、結婚できず)」といった偏狭な個人主義がまかり通り、高じて「見合いを薦めるのは個人情報漏洩、いやセクハラだ」といった風潮を「健全でない」と言えなかった社会が、今危惧されている少子化を作り出したのではないか。「産む、産まない」は個人の自由だと、私も思う。しかし、求めるべきは、結婚して子を持つ自由を無理なく選択できる社会ではないのか。

 昨年、結婚適齢期の男女の結婚率が50%を切ったとの統計がある。少子化が加速する。社会保障や税制等、一般に危惧されているものは心配されるだけまだ良い。国防はどうなるのか。少子化は当初に高齢化社会をもたらし、やがて人口の急減少を迎える。それに伴い国力が衰退して良いのなら、国防力もサイズダウンさせれば済む話だろう。しかし、未来においても国の繁栄と国益を守っていくのであれば、それに見合った国防力が必要である。人口急減によって大きな影響を受けるのは自衛隊だろう。人口構造に照らした未来の国の姿と安全保障の在り方を真剣に考えなければならない時期に至っている。海外からの労働力を更に受け入れていけば、多民族国家へと変わっていくだろう。多民族国家の防衛力構築については、幾つか例はあるが、いずれも難しい面が多々あると聞く。一国の人口構成と安全保障態勢の変化は、国際安全保障の枠組にも影響を与え、結果として安全保障環境を不安定化することになるかもしれない。そこまで考えると、2000年以上に亘って単一民族を維持してきたこの国体を守ることの重要性を再認識させられる。

 一世代30年というが、約30年前の1975年に57,000人いた日本船員は今2,600人にまで急減した。日本の海の生命線を支えているのは外国人船員である。かなり問題はあるのだが、海運はそれでも成り立っている面がる。しかし、防衛・安全保障はどうか。外人傭兵部隊か?国連軍創設を頼むか?荒唐無稽だろう。適正人口は国の安全保障の基盤であり、少子化は安全保障上の問題でもある。この世の創造主は、全ての命を有限とし、子孫を残す方法で種を存続させる仕組みを作った。万物の霊長たる人類もまた、同じメカニズムの中で生きる被造物である。人は、自然界に沿った生き方のできる社会を創らなければならないのだ。それを「健全」と言う。
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