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2015-10-07 09:55

(連載2)日本による「限定的核保有」の可能性

加藤 成一  元弁護士
 ご案内の通り、元外務事務次官・元アメリカ大使の故村田良平氏も「安全保障においては、外交と防衛は車の両輪である。今や政府は勇気をもっていかなるタブーもない核論議を推進する時期に到達したと認識すべきである。日本の総理と米国の大統領の合意なくしては不可能だが、米国を説得して日本も一定の極めて限定的な核戦力(あくまで報復力たる抑止力)を保持する途が探究されるべきだ」と述べておられる(村田良平著『村田良平回想録』下巻316頁以下、2008年ミネルヴァ書房刊)。

 これは、主として2008年当時の北朝鮮の核開発による危機感を念頭に置いたものであるが、核保有国である中国の潜在的脅威も念頭にあったと思われる。力が支配する弱肉強食の厳しい国際政治の現実を長年見て来た外交官としての村田良平氏の日本国を思うがゆえの勇気ある憂国の提言と言えよう。すべてをアメリカに依存し、独自の核抑止力を持たない日本の安全保障上の脆弱性を指摘した言であると言わなければならない。

 日本国民としては、アメリカの抑止力のみに安易に依存すべきではない。一方で、積極的平和主義に基づく平和外交を推進しつつも、他方で、それとあわせて、今や東シナ海・南シナ海において力による現状変更の意志を隠そうともしない軍事大国・中国の動向などを注視し、日本を取り巻く厳しい安全保障環境の変化に対応しなければならない。

 要するに、東アジアにおける中国の軍事的台頭など、安全保障環境の大きな変化を考えれば、日本独自の「限定的核保有」の可能性(自衛のための必要最小限の核兵器の保有は、日本政府の憲法解釈では合憲とされている)を、あらゆるタブーを排除し、真剣に考えてみることが、今こそ私たち日本国民に求められていると言えるのではあるまいか。(おわり)
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