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2015-09-21 00:21

(連載2)安全保障関連法成立と米中日関係

角田 勝彦  団体役員、元大使
 オバマ政権は南シナ海の埋め立てやサイバー攻撃をめぐって中国への懸念を強めている。「キツネ狩り」と呼ばれる米国への逃亡汚職官僚への中国公安の動きにも不信の目を向けている。オバマは、両国が対立を深めるサイバー分野に関して習近平に懸念を直接伝える考えで、東・南シナ海での領有権対立も取り上げ、一方的な行動をやめるよう求めると見られる。北朝鮮の核・ミサイル開発への対応も話し合う方針である。

 中国は譲歩しないで対立を避ける方途を探している。王毅外相は訪米を「信頼醸成と疑念払拭の旅」と表現している。9月3日に北京で行われた「抗日戦争勝利記念」軍事パレードは米国への牽制の意味もあったとみられるが、軍事衝突は考慮外である。経済面でも米国との関連は重視せざるを得ない。株価下落に始まる中国の経済不安は世界経済に悪影響を及ぼしたが、米国FRBの9月17日の利上げ見送りは小康を与えた。中国政府は9月13日、国有企業の改革を進める長期戦略を発表していたが、18日深夜、中国共産党と国務院(内閣に相当・直属機関)は、政策スタンスを総括する文書を共同で公表した。文書は、外資の投資規制から自由貿易試験区、国内企業の海外進出促進など多岐にわたり言及する一方、市場開放へのコミットメントを強調する内容となった。GDP算出方法も見直し、1992年以降を全面改定する予定である。

 オバマ政権は議会共和党への配慮もあり、習近平にかなり厳しい対応をとっている。中国側が要請していたとされる議会での演説は見送られ、議会指導部と会談する方向となった。習近平がワシントン入りする9月24日にはローマ法王が米議会で史上初の演説を行い、人権問題を訴える予定である。25日の首脳会談でもオバマは激しい発言を行うようである。例えば「中国がサイバー攻撃をすぐに中止しなければ、経済制裁を発動する」と伝えるようである。
 
 安倍首相は今回はあえてオバマと会談しないが、ずっと良い居心地を味わうだろう。すでに米国政府等は安全保障関連法成立を歓迎する意向を表明している。国連総会は「9月14日、15日から始まる次期会期で国連安全保障理事会の改革を巡る政府間交渉を早期に再開する」ことを全会一致で決定した。常任理事国入りを目指す日本にとって朗報である。中韓首脳、さらにプーチン・ロシア大統領との会談も模索していると伝えられる。安倍首相は、首脳同士の接触により、直接国際情勢を判断する良い機会を持とう。目下の国際環境の動きが、必ずしも集団的自衛権の行使を必要としないことを認識されることを期待する。(おわり) 
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