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2007-02-13 12:00

安倍総理は「呆守」か

角田 勝彦  団体役員・元大使
 筆者の「解釈変更による集団的自衛権行使は無理」論が、昨年9月に続き、今回も「百花斉放」欄での激しい反論を呼んだことは、本欄のため喜ばしいと思う。本テーマでの再投稿に、筆者の「議論活発化」への底意が感じられると言われても甘受する。 

しかし、岡本幸治氏の「(筆者に)集団的自衛権を何とか認めさせないでおきたいという底意があるのかと疑われる」とのご指摘に対しては、議論を法律論に集中していただきたいとお願いしたい。筆者は「(憲法改正なしの)解釈変更による集団的自衛権行使は無理」と述べているのであり、集団的自衛権を認めるべきか否かは、別の問題である。まぜこぜに議論を行うつもりはない(筆者は、昨年8月刊行の『変えるのは総理かあなたかーいまニュールネサンスからの国際関係』(中央公論事業出版)で筆者の考えを詳細に開陳している)。なお、「底意」という表現には、「呆守」という表現にもみられる(異論を受けつけないような)氏の政治的信念の強さが現れていると感じざるを得ない。

 そこで法律論である。「凍結していた芦田修生(ママ)を活用して、第9条は自衛戦争まで否定してはいない、ということになった」というのは、確かに存在する学説のひとつであるが、ほかの学説も多く、「なった」とは言えないことは周知の事実である。なお、認められるとしても、自衛戦争とは攻撃された場合の自衛を指すというのが普通の解釈である。

 「ひとたび自衛権が違憲でないとなれば、その行使を個別にするか集団で行うかは行政府の政策問題であり、裁判所とは関係がない」との議論に至っては、違憲審査権(憲法第81条)を無視されているのかと思わざるを得ない。また、そもそも自衛権と自衛隊の混同が見られる。日本国憲法下でも自衛権(国連憲章でも固有の権利)は認められてきたし、それを行使する武力組織としての自衛隊が合憲かどうかが問題になっていたのである。

 次に「行政府の政策」である。氏の言うように「首相の指揮命令下にある行政官僚」が内閣の意に反する政策を強行することはできない。責任は内閣、最終的には首相にある。安倍首相は、施政方針演説で「憲法で禁止されている集団的自衛権」と明言されている。「改むるに憚る事なかれ」といわれるが、「改むる」には法理的説明が不可欠であろう。「呆守」と批判される前に、首相及び「保守」党が納得できる法理を提示されることはできないだろうか。
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