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2015-07-01 11:05

安保法案違憲論は理論的に自己破綻

倉西 雅子  政治学者
 目下、注目を集めておりました安保法案については、6月中の採決は見送られました。参考人として招致された憲法学者による違憲論の影響とも見られますが、この違憲論、矛盾に満ちていると思うのです。

 憲法第9条を擁護する人々は、今般の安保法案については、特に自衛隊の海外派兵に対しては、並々ならぬ警戒感を示しております。しかしながら、日本国憲法の第9条が、国連、あるいは、“国際社会の善意”に依拠していることを考えますと、この態度は、あまりにも無責任としか言いようがありません。日本国憲法が制定された1946年当時、日本国の安全は国連によって完全に保障されるとする幻想が生きており、また、周辺諸国も善意に満ちていると信じられておりました。

 この二つの前提の下で、“戦争放棄”や“軍隊の不保持”が新憲法に明記されたわけですが、そのことを考えると、安保法制を違憲とする説はいまや説得力を失っております。前提が完全に崩壊しているからです。第二の側面は、前提の如何にかかわらず、自衛隊の海外派遣の否定は自己否定となるからです。即ち、安保法制違憲論者は、第9条において自国の安全を国連及び国際社会の救済に頼り切りながら、自らは、その活動を忌むべき“戦争”として批判し、その活動に参加しないと宣言しているからです。自国の安全が脅かされた時には、国連や他国による救済を当然の事のように期待する一方で、他国の安全や国際の平和が侵害された時には、自らはこれを拱手傍観すべし、となりますと、日本国は、国際社会のフリーライダーとなりかねません。

 憲法第9条が、国連や国際社会に依存しているのであればこそ、国際社会の一員であり、国連にも加盟している日本国は、国際社会全体の平和と秩序の維持に対して、相応の責任を負うべきなのは、理の当然ではないでしょうか。自衛隊の海外派兵の否定を以って“平和”であるとする主張は、利己的であると共に、論理的にも重大な自己矛盾を抱えていると思うのです。
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