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2015-05-26 11:16

(連載1)認識すべき歴史は戦争の歴史のみではない

角田 勝彦  団体役員、元大使
 5月20日行われた今国会初の党首討論では、安保関連法案審議の難航を予想させる討論が中心だったが、共産党志井委員長がポツダム宣言を取り上げて安倍総理の歴史認識を質す展開もあった。この夏に予定されている総理の戦後70年談話についても「植民地支配と侵略」「心からのおわび」の文言に関心が集中している。

 だが認識すべき「歴史」は、ポツダム宣言に象徴されるような戦争責任や敗北の歴史のみでなく、第2次大戦の結果を基に戦後70年人類が築き上げてきた歴史すべてであるべきである。それは「戦後世界秩序」そのものであり、具体的には国連憲章にも具現化された、紛争の平和的解決、国際法の尊重、武力による威嚇と行使の抑制の義務である。いかなる国も、力によりその主張を実現しようとしてはならず、自衛と国連の集団的安全保障体制に基づく場合を除いて武力を使用してはならないという認識である。さらに核戦争が人類絶滅をもたらしかねないことから、核拡散防止条約(NPT)などで「核のない世界」が人類の目的とされてきている(この意味から今回のNPT再検討会議が最終文書を採択できず決裂したのは歴史の逆行であり遺憾だった)。

 安倍総理は、戦後70年談話に、(1)先の大戦の反省(2)平和国家としての戦後日本の歩み(3)今後の国際貢献のあり方、を盛り込みたい由である。談話は(2)及び(3)を中心とし、米議会演説で表明されたような未来志向の信念を、堂々と世界に伝えるべきであろう。なお、そのためにも(1)の文言に拘泥しすぎることは得策ではあるまい。

 志井和夫共産党委員長は、20日の党首討論で、ポツダム宣言について「日本の戦争について世界征服のための戦争であったと明瞭に判定している。総理はこのポツダム宣言の認識を認めないのか」と質問した。安倍総理は「その部分をつまびらかに読んでいないので、直ちに論評することは差し控えたい」と応えた。ポツダム宣言は、米英中(ソ連追認)首脳が昭和20年7月26日に日本に降伏を求めて発出した共同宣言で、紆余曲折の末、8月14日受諾された。北方領土や尖閣諸島など領土問題とも密接な関係がある。志位委員長は「日本の戦争の善悪が判断できない首相に、米国の戦争の善悪が判断できるわけがない。『戦争法案』を出す資格はない」と批判したが、安倍総理が仮に戦争目的(世界征服)等へ疑義を提示していたら米国を含む国際的批判を招いた可能性大で、論評を避けたのは正解だった。(つづく)
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