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2015-04-11 16:25

(連載1)「天皇の政治利用」のメディアを懸念

中村  仁  元全国紙記者
 天皇、皇后両陛下はパラオへの戦没者慰霊の訪問を終えました。陛下の念願の旅は、戦後70周年ということもあり、テレビ、新聞では手厚い報道ぶりでした。ちょっと気になったのは、「旅の意味をそこまで拡大解釈すると、天皇の政治利用になるのでは」という懸念でした。天皇家の思いは思いとして、それを現実の政策論争に巻き込んではなりません。訪問初日、テレビ朝日の「報道ステーション」をみていましたら、延々、冒頭の30分前後も時間を割いていたでしょうか。グループ企業の朝日新聞を含め、皇室には距離をおくテレ朝にしては「随分と長いな」と思ったのが第一印象です。翌日もキメ細かくフォローしていました。

 戦没者慰霊碑における供花、澄み切った太平洋の海の彼方を鎮めて見つめるお二人の姿のシーンなどは、鎮魂、慰霊という言葉がよくあてはまりました。お二人の行動の紹介にあわせ、テレ朝は昭和天皇が戦争に突き進んだことを悔やむ様子やそれをめぐるお言葉、悲惨な敗戦後の社会の姿などを十分すぎるほど伝えておりました。現在の天皇が皇太子だった頃の疎開の話、帰京して目にした焼け野原のフィルム映像も写しだしました。

 昭和天皇、今上天皇に加え、今の皇太子の誕生日の談話(2月23日、55歳)も改めて紹介しました。この談話は中国、韓国など海外でも話題になりました。「戦後70年を迎える本年、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています」、「戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう過去の歴史に対する認識を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切です」あたりの部分は、安倍政権の一連の安全保障政策への注文ないし間接的な批判を示唆したと受け取る国もありました。

 それにしても、パラオ慰霊の番組を見ながら、「丁寧すぎるほど、皇室の平和への願い、歴史認識への思いを紹介しているのはなぜだろう」と、思いましたね。「なるほどそういう計算か」と思ったのは、古舘キャスターが次のテーマに移る前に、「さて、国会では安全保障政策の議論が深まっていきます」というような意味のことをしゃべった時です。実際に、国内外には「日本は再び昔の道に戻ろうとしている」との批判が聞かれます。(つづく)
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