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2015-03-26 10:37

(連載2)安倍首相の訪米を前にして思う

角田 勝彦  団体役員、元大使
 民主党は、反対の姿勢を明らかにしている。岡田克也代表は3月20日の談話で「拙速な議論は国会軽視だ」と今国会で成立を目指す与党を牽制した。22日には「安倍政権NO!大行動」と銘打つ参加者約1.4万人(主催者発表)の大型デモも都心であった。辺野古も事態が悪化している。23日、沖縄県の翁長知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部で埋め立てに向けた海底作業を全面停止するよう指示した。翁長知事は沖縄防衛局に対し、作業を停止し7日以内に報告しなければ、来週にも海底の岩石採掘と土砂採取などの岩礁破砕に関する許可(仲井真弘多前知事による昨年8月の許可)を「取り消すことがある」と警告したが、沖縄防衛局は24日海底ボーリング調査を続行した。政府側は「現時点で作業を中止すべき理由は認められない」(菅義偉官房長官)として、指示に従わない方針である。なお、米国務省のハーフ副報道官は23日の記者会見で「代替施設の建設は計画通り進むと理解している」と述べ、移設は地元の負担軽減につながるとあらためて強調し、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査などを予定通り進めるべきだとの立場を示した。

 政府首脳はこれまで翁長知事との対話を避けてきたが、法廷闘争も予想される現在、対話の時期が来たのではないだろうか。米ソ冷戦の間、核とドルと国連によって世界秩序を維持してきた米国だが、皮肉にも超大国ソ連の崩壊後、「歴史の終わり」(フランシス・フクヤマ)、すなわち米国単極化と民主主義の普遍化の幻影を経て、秩序管理の能力の喪失の可能性に直面している。オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と管理する意欲の喪失すら公言し、アフガンとイラクからの米軍撤収を優先してきた。

 現在のところ、米国の関心は、対テロを含む自国の防衛確保と多強中の最強(できれば1超)の地位の維持確保にあると見られるが、将来を踏まえての最大の関心地域はアジアである。かかる米国にとって、同盟国日本への期待は、憲法上限界がある軍事的支援の多少の増大より、国内が日米同盟を巡って争わないこと及び近隣諸国と無用の波風を立てないことであろう。日米同盟により、アジアでの軍事衝突にひきずりこまれることなどは、米国が悪夢とするところだろう。

 このような認識に立てば、安倍晋三首相が訪米に当たりなすべきことは明らかである。国内での安保法制整備やガイドライン改定の無理急ぎを行わず、沖縄については県との対話を行うこと、近隣諸国とは、幸い実現した21日の日中間外相会談や23日の与党幹事長の訪中のような交流を促進すること、軍事的には尖閣諸島などを巡る偶発的衝突を回避するための日中防衛当局間の「海上連絡メカニズム」の早期構築へ協議を急ぐこと、米議会演説では歴史認識の問題の従来路線を確認し、今夏に発表する安倍首相の戦後70年談話への米国を含む各国の懸念を払拭することなどである。政治によってこそ紛争の解決は可能である。安倍政権が本道を歩むことを期待する。(おわり)
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